掛け軸の種類にはどんなのがありますか?またその特徴と骨董価値はどれくらいですか?
掛け軸の種類と特徴、骨董価値をご紹介します。
掛け軸は「空間の衣類」
人間は季節に合わせて服をコーディネートすることで快適さを確保したり、お祝いの席や法事などの行事に合わせた服を着ることで喜びや悲しみを伝えたりします。
絵画のように飾る掛け軸は単なる室内装飾ではなく、季節や行事に合わせて掛け替えることで季節感や喜び、悲しみといった雰囲気を作りだす「空間の衣類」のような役割を果たします。
衣類に「普段着」「セレモニー用」「パーティ用」などの種類があるように、掛け軸にも用途ごとにさまざまな種類があります。
日常掛
季節を問わない画題が描かれた掛け軸を「日常掛」「普段掛」といいます。
「山水画」や「風景画」は古来から人気の高い画題で、なかでも墨の濃淡で奥行きを表現した水墨画は静謐な奥深さが好まれ日常掛としてよく利用されます。
また、雄大な姿が美しい「富士山」、悪運や邪気を払う「龍」「虎」、まっすぐに伸びる竹と無邪気に遊ぶ雀が家運隆盛と子孫繁栄を連想させる「竹に雀」なども日常掛としてよく利用されます。
季節掛
季節を問わない画題で年中使用できる日常掛に対し、豊かな色彩で季節ごとの「花鳥風月」を描くことで四季折々の風情を表現したのが「季節掛」です。
春は冷たい早春の空気のなかで気品のある紅白の花を咲かせる「梅」や、日本を象徴するといわれる「桜」を描いた掛け軸が季節掛としてよく使われます。
夏は「川を泳ぐ鮎」「朝顔」など、涼感のある画題、秋は「秋の七草」「紅葉」「柿」などが好まれる画題です。
冬は雪の白との対比が美しく、古来から「鬼門除け」として親しまれた「南天」や「寒椿」が季節掛として使用されます。
節句掛
端午の節句や桃の節句などにかけられる「節句掛」は、節句に合わせた鎧兜、桃、雛人形などが画題の掛け軸です。
慶事掛
「祝儀掛」とも呼ばれる「慶事掛」は、結納や結婚、正月などお祝い事やおめでたい日に飾る掛け軸で、「松竹梅」「鶴亀」などのめでたい画題が用いられた掛け軸です。
また、お正月には「旭日」、結婚や結納、銀婚式、還暦祝いなどでは「高砂」、出産には「滝登り」など、祝い事の内容に合わせた画題を選ぶ事もできます。
仏事掛
法要や弔事、お盆やお彼岸などに掛けられる「仏事掛」は、仏事があったときに掛けられるという性質上、使用される画題は仏画や蓮の花に限定されます。
また、「南無阿弥陀佛」「南無大師遍照金剛」「南無妙法蓮華経」「南無釈迦牟尼佛」などの書も仏事掛の一種ですが、使用するときは宗派に合わせて選ぶ必要があります。
茶掛
茶室に飾る「茶掛」は、季節掛のような花鳥風月を画題にした作品もありますが、通常の季節掛に比べると格式高い掛け軸が使用されます。
また、茶道の心や禅の心を表現した書も多く、掛け軸の言葉の本質を読み解く楽しみをお茶と一緒に提供するといった「もてなし」として使用されます。
掛け軸の骨董価値
掛け軸の価値は種類を問わず「作家」「時代」「状態」がカギとなります。
例えば、同じ画題を用いた無名作家の掛け軸でも、江戸時代の作品と室町時代の作品では室町時代の作品の方が骨董価値が高くなる傾向があります。
また、作家物の場合は制作点数が少なかった年代の作品、円熟期の作品などは価値が高くなります。
まとめ
掛け軸にはさまざまな種類があり、季節や行事などに合わせて使用することで空間をより引き立たせることができます。
定期的にかけ替えることは掛け軸の状態を保つためにもよいことですので、掛け軸をお持ちの場合は衣類をコーディネートするような感覚で掛け替えを楽しんでみてはいかがでしょうか。