螺鈿(らでん)細工とは?人間国宝や有名作家にはどんな人がいますか?
螺鈿(らでん)細工についてと、螺鈿細工の人間国宝や有名作家をご紹介します。
螺鈿細工とは
螺鈿は、ヤコウガイ、シロチョウガイ、アコヤガイ、アワビといった虹色光彩を持つ貝の真珠層を使用した装飾技法で、主に漆器の加飾に利用されます。
漆地や木地などに板状にした貝をはめ込み、真珠層特有の光沢でさまざまな模様を表現します。貝の種類によって光沢感や色合いが異なるのも魅力です。
一般的には薄い板状の貝を用いますが、芝山漆器など厚みのある貝を使うこともあります。厚みのある貝を使用した螺鈿細工は、表面に彫刻が施されるケースもあります。
日本だけではなく、韓国、中国、タイ、ベトナム、カンボジアなどのアジア諸国の工芸品にも螺鈿細工が存在します。
螺鈿細工の歴史
唐から日本に螺鈿が伝わったのは奈良時代。伝来当初は琥珀やべっ甲などと一緒に楽器の装飾に使用されており、正倉院宝物の「螺鈿紫檀五絃琵琶」などにも螺鈿が施されています。
平安時代に入ると螺鈿の技術は急速に発展し、漆芸の代表的な加飾法である「蒔絵」と併用して用いられるようになります。鎌倉時代には馬具の装飾に用いられたほか、安土桃山時代にはヨーロッパに輸出する「南蛮漆器」に螺鈿が用いられ、ステータスシンボルとして人気を博しました。
江戸時代になると鎖国によって海外市場を失いますが、印籠や根付など国内向けの工芸品に用いられ、生島藤七、青貝長兵衛といった名高い職人も登場しました。
螺鈿細工の作家
【北村昭斎(きたむらしょうさい)】
北村昭斎は1938年、奈良県で生まれました。漆芸家の家庭に生まれた昭斎は東京藝術大学美術学部工芸科卒業、早川電機工業(現在のシャープ)の工業デザイン部門勤務という経歴を経た後、父・北村大通のもとで漆芸の制作と文化財修復の技術を学びます。1999年に重要無形文化財「漆芸(螺鈿)」の保持者(人間国宝)に認定されました。
【田口善国(たぐちよしくに)】
田口善国は1923年に東京で生まれた漆芸家で、蒔絵の重要無形文化財保持者です。幼少から尾形光琳に魅了されて漆芸家を目差し、1960年に日光東照宮・中尊寺金色堂の保存修復に従事するなど、さまざまな功績を残しています。
蒔絵の人間国宝ですが、螺鈿も得意としており、蒔絵と螺鈿を巧みに使った現代的な漆器を制作した作家です。
まとめ
螺鈿細工は茶道具や食器などはもちろん、琴や三味線といった楽器類、タンスやテーブルなどの家具類にも施されており、伝統工芸としては比較的身近な存在です。
現在でも奈良漆器をはじめとした漆芸品に螺鈿が使われているほか、和紙や絹と組み合わせて織物にするなど、新しい技術を取り込んで進化を続けています。
身近な存在なので見落とされがちな螺鈿細工ですが、見かけたときはじっくりと鑑賞してみてはいかがでしょうか。