有田焼を代表する柿右衛門と、濁手などその作品の特徴について教えて下さい。
柿右衛門とその作品の特徴について説明します。
海外でも人気が高い「柿右衛門」
1610年代から始まったとされる有田焼は、中国の景徳鎮に影響を受けた染付磁器から始まり、1640年代からは色絵磁器、17世紀末ごろから金彩をまじえた金襴手が作られるようになるなど、独自に発展してきました。
「柿右衛門」の生産が始まったのは1660年代のことです。
この頃、ヨーロッパ諸国は白い器を作る技術を持っておらず、有田焼の多くが海外に輸出されましたが、なかでも柿右衛門は高く評価され、18世紀になるとマイセンなどのヨーロッパ各地の窯で柿右衛門を模倣した品が生産されるようになりました。
海外でも人気が高い柿右衛門ですが、どのような特徴があるのでしょうか。
柿右衛門が持つ「余白の美」
「有田焼」と聞くと「赤や青、金彩でびっしりと絵つけされた焼き物」をイメージする人が多いのではないでしょうか。
これは、数ある有田焼の様式の一つである「古伊万里金欄手」といわれる様式で、ヨーロッパ向けに輸出された物の多くがこの様式を採っています。
また、有田焼の代表の一つとされる「鍋島焼」は柿右衛門よりも古い1640年頃から将軍家・諸大名などへの贈答用高級磁器として焼かれ始めた様式で、赤、黄、緑の三色で絵付けが施された「色鍋島」は全体的に華やかな印象があります。
一方、「柿右衛門」は鮮やかな赤、青、緑、黄などの彩色を使い、色鍋島よりも色数が多いものの余白がふんだんに取られており、華やかさよりも「わびさび」を感じさせる風情があります。
自然をテーマとした大和絵の要素を取り入れた絵柄と独特な構図はほかの様式にはない「余白の美」として高く評価されています。
濁手(にごしで)とは
また、柿右衛門の特徴は「余白の美」を作り出している白い素地の美しさにあります。
柿右衛門の素地は「濁手」といわれ、従来の磁器が青味がかった白ではなく、純白に近い乳白色をしています。
透き通った人の肌とも評される柿右衛門の白は、明るい色をより際立たせる効果があり、描かれた文様をより繊細に美しく浮かび上がらせてくれます。
また、文様でびっしりと覆い尽くすのではなく、余白を作って素地の美しさを余すことなく見せるという「美の相乗効果」を得ているといえるでしょう。
しかし、濁手の品は「作るのに手間がかかる」「焼成が難しい」などの理由から作られなくなった時期があるため、濁手を見られるのは柿右衛門のなかでも一部だといわれています。
まとめ
その美しさや独特な様式から「有田焼の最高峰」ともいわれう柿右衛門は、マイセンの「シノワズリ」など、ヨーロッパの磁器に与えた影響も大きく、時代が経った現在でも国内外で高い評価を得ています。
なかでも、透き通るような白が特徴的な濁手の柿右衛門は、美しいだけではなく希少価値も高い名品といえるでしょう。