沈金(ちんきん)とはどのようなものですか?
沈金は、漆器に装飾する技法の一つです。
沈金とは
沈金は漆器の塗り終わった表面にノミで文様を彫り、掘った部分に金箔や金粉を押し込む装飾技法です。かつては、中国やタイ、インドでも行われましたが、現代では日本でもっとも盛んに行われており、特に輪島塗でよく使われている技法です。
輪島地方の気候は湿気が多く、上塗り漆を熱く重ねることができます。あわせて、金沢は日本一の金箔の産地です。このような地域の特性があり、沈金は輪島塗に欠かせない装飾技法となっています。
沈金の歴史
沈金の起源は中国の「鎗金」(そうきん)という技法にあると考えられています。
鎗金は宋の時代に始まり、明の時代の初め頃に最も発達しました。
鎗金の作品が日本に伝わったのは、今から700年ほど前の南北朝時代のことです。鎗金が施された漆塗りの経典箱が、現在も残されています。現在の沈金の技法が生み出されたのは、江戸時代に入ってからでした。
鎗金の技法をヒントに、大工がノミの刃先で塗り物に彫刻をあしらったものを作ったことが、日本の沈金の始まりといわれています。
沈金で使う道具
職人のこだわりは作品だけでなく、制作のための道具にもあります。
沈金師も例外ではなく、仕事で使う道具は自分で作り、使いやすいように工夫しています。
沈金師に弟子入りをすると、まず道具作りを教わります。
親方や兄弟子から、彫るための基本的な道具であるノミの作り方、研ぎ方を教わります。
ノミは鋼でできているので、刃物と同じように研磨用の機械を使用します。
刃の部分を形になるまで削り、砥石で細かく刃先を調整しながら仕上げます。ノミを作り、研げるようになって初めて、ノミの持ち方や彫り方を教わることができるのです。
沈金の制作過程
- 下絵:漆器の形に合わせた型紙に下絵を描きます。
- 置目(おきめ):下絵を器に転写します。
- 素掘り:ノミを使い、置目に沿って彫ります。
- 漆の摺り込み:彫った溝に、金箔や金粉などを固定するための漆を塗り、はみ出した漆を拭き取ります。
- 箔置き:漆を塗った絵柄に、金箔や金粉などを貼ります。
- 乾燥:漆に金箔などが定着するまで乾燥させます。
- 仕上げ:乾燥したら、必要のない金箔を落とします。
沈金の人間国宝
前大峰
昭和30年に人間国宝として認められています。
輪島塗沈金師の3代橋本佐助に弟子入りし、沈金を学びました。
昭和4年には「遊鯰の手箱」が帝展特選、21年日展特選、24年「沈金蘭と猫文小屏風」で文部大臣賞を受賞しています。
従来の線彫り中心の沈金では困難だった立体的表現を、点描で可能にしています。猫の柔らかく丸い体を表現した作品が有名です。
前史雄
平成11年に人間国宝として認められています。
父である前大峰に師事し、沈金を学びました。
第20回日本伝統工芸展で「沈金稲穂に雀色紙箱」が文部大臣賞、第39回日本伝統工芸展で「沈金漆箱「篁」」が日本工芸会総裁賞、第44回日本伝統工芸展で「沈金漆箱「十六夜」」が日本工芸会保持者賞を受賞しています。
ノミを工夫して、各種の彫刻技法を駆使した制作を行っています。また、金・銀粉などの色彩効果を使用し装飾効果を高め、情緒豊かな作風を築いており、高く評価されています。
まとめ
沈金について歴史や、制作手順、人間国宝をご紹介しました。
有名な作家の作品であれば、高値での買取が期待できます。お手元に沈金をお持ちの方は、買取の際お気軽にご相談ください。