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ここでおさらい。石川県を代表する漆器。輪島塗・山中漆器について教えてください。

石川県を代表する漆器、「輪島塗」と「山中漆器」

日本の伝統工芸を語るうえで、避けて通れないのが「漆器」。その中でも、石川県の名前を聞けば「ああ、漆器の名産地だな」と思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。

実際、石川県は日本国内でも屈指の漆器産地として知られ、なかでも「輪島塗(わじまぬり)」「山中漆器(やまなかしっき)」は、その名を全国にとどろかせる存在です。それぞれに異なる魅力があり、今も多くの人々に親しまれています。

この記事では、そんな石川県を代表する漆器、「輪島塗」と「山中漆器」の成り立ちや特徴、そして現在の姿について、骨董品に興味を持つ皆さんへ向けてわかりやすくご紹介します。

石川県はなぜ漆器の一大産地なのか?

日本には各地に漆器の産地があります。福井の越前漆器、和歌山の紀州漆器、福島の会津塗など。それでも、なぜ石川県の漆器がここまで有名になったのでしょうか。

その背景には、江戸時代の加賀藩・前田家の存在があります。戦国時代末期、前田利家が金沢城へ入城したことで、金沢は加賀百万石の城下町として栄えました。その頃から、美術工芸を支援する風土が形成され、漆器に限らず、九谷焼や金沢箔、友禅など多くの工芸が育まれていきます。

つまり、石川県の漆器文化は、自然発生的に生まれたというより、歴史と政治の流れのなかで磨かれてきた文化なのです。そんな中でも特に存在感を放っているのが、能登半島の「輪島塗」と、加賀の山中温泉を中心とした「山中漆器」です。

漆器の王者とも称される「輪島塗」

輪島塗と聞くと、「高級品」「格式高い」といった印象を持つ方が多いと思います。そのイメージは、決して間違っていません。輪島塗は、日本の漆器の中でも特に耐久性と重厚感に優れており、「漆器の最高峰」とまで呼ばれることもあるほどです。

輪島塗の歴史

輪島市がある能登半島では、古くから漆を使った器が作られてきました。実際に、平安時代の遺跡からも漆製品が見つかっているのだとか。さらに、室町時代の遺構からは、現在の輪島塗とよく似た手法で作られた漆器も発掘されています。

輪島市内にある重蔵神社の旧本殿に見られる朱塗りの扉は、現存する最古の輪島塗の遺構とされています。ここからも、輪島という地域がいかに古くから漆文化と深く結びついていたかがわかります。

厚みと堅牢さが生む「信頼」

輪島塗の最大の魅力は、やはりその堅牢さと重厚感です。ふっくらとした丸みのある手触りは、思わず指先でなぞりたくなるような温かみがあります。

この独特の厚みは、「下地」の技術に秘密があります。まず、木地に麻布を漆で貼り付け、その上から「地の粉」と呼ばれる、漆と混ぜた土を何層にも塗り重ねていきます。その工程を何度も繰り返すことで、非常に頑丈な下地が形成されます。

その後、中塗り、上塗りを重ね、仕上げに沈金や蒔絵といった華やかな加飾が施されて完成となります。この緻密で手間のかかる工程こそが、輪島塗を唯一無二の存在へと押し上げているのです。

用の美を兼ね備えた工芸品

輪島塗の器は美しさだけでなく、実用性にも優れています。厚みのある塗りは、日常的な使用でも剥げにくく、長年使い続けることができます。

一見すると「飾っておくための工芸品」のように思えますが、実際には「日常の中で使ってこそ価値がある」と考えられているのも、輪島塗ならではの特徴です。

木地にこだわる「山中漆器」の美学

輪島塗と並び称される山中漆器。その最大の特徴は、「木地」へのこだわりにあります。

山中漆器は、加賀市山中温泉の山間部に住んでいた職人たちが、安土桃山時代頃から「ろくろ挽き」によって器を作り始めたことに始まると言われています。

現在では、日本国内でも屈指の木地挽物技術を誇る漆器産地として知られています。

「縦木取り」に込められたこだわり

山中漆器では、ケヤキやトチ、クリなどの国産材を輪切りにし、木の繊維に沿って縦方向に木地を取る「縦木取り」という技法を用います。

これは木の強度を活かすと同時に、反りや割れを防ぐ工夫でもあります。この木地を、熟練の「木地師(きじし)」がろくろで挽いて器の形に整えていきます。

また、器の表面に施される「加飾挽き」も見どころのひとつ。「糸目筋」「ろくろ筋」「びり筋」などと呼ばれ、装飾としての美しさはもちろん、手に持ったときの滑り止めの役割も果たしているのです。

木の呼吸を感じる漆器

山中漆器は、薄く軽く仕上げられているのが特徴です。輪島塗のように厚塗りではなく、素材である木の風合いや木目を活かす塗りが施されます。

そのため、見た目にもやさしく、手に持ったときの軽さと温かさは格別。日常使いにぴったりで、お椀や湯呑み、茶道具としても高い人気を誇ります。

特に茶人の間では、木地の自然な味わいを愛する方も多く、「棗(なつめ)」などの茶道具としても山中漆器が選ばれています。

「塗りの輪島」「木地の山中」― それぞれの美を活かす共演も

輪島塗と山中漆器は、長らくそれぞれ独自のスタイルを保ちつつ発展してきましたが、近年ではその垣根を超えたコラボレーションも増えてきました。

たとえば、山中漆器の木地師が丁寧に挽いた器に、輪島塗の塗師が漆を塗り加飾を施すという共同制作。まさに「木地の山中、塗りの輪島」と称される両者の美点を融合させた、非常に完成度の高い漆器が生まれています。

こうした流れは、技術の継承だけでなく、新たな価値創造としても注目されており、今後の伝統工芸のあり方を示唆する好例ともいえるでしょう。

まとめ

石川県を代表するふたつの漆器、輪島塗と山中漆器。それぞれに異なる歴史と技術、そして美意識が込められています。

輪島塗は重厚で華やか。塗りの美しさと堅牢さに心を奪われます。対して、山中漆器は繊細で軽やか。木そのものの美しさや温もりを活かした作りに、静かな感動を覚えます。

同じ「漆器」というくくりの中でも、これほどまでに個性が分かれるというのは、まさに日本の工芸の奥深さ。骨董としても、それぞれに価値があり、好みに合わせて選ぶ楽しさもあります。

もし骨董品として輪島塗や山中漆器を手に取る機会があれば、単なる器ではなく、その背景にある職人の技術や、地域の文化、歴史に想いを馳せてみてください。それが、伝統工芸を楽しむ最初の一歩になるかもしれません。

 

 

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