茶道の三千家って何?それぞれの違いを知っていますか?
茶道の三千家とは、表千家・裏千家・武者小路千家の三流派のこと。それぞれの作法やお茶の点て方には違いがありますが、基本の精神は共通しています。
茶道の世界には数多くの流派が存在しますが、その中でも特に有名なのが「三千家(さんせんけ)」と呼ばれる流派です。三千家とは、表千家(おもてせんけ)、裏千家(うらせんけ)、武者小路千家(むしゃのこうじせんけ)の三つの家元のことを指します。いずれも千利休の孫の代から始まった流派であり、基本となる「侘茶(わびちゃ)」の精神は共通していますが、細かな作法やお茶の点て方、道具の使い方に違いがあります。
この記事では、三千家の歴史や特徴、作法の違いについて詳しく解説していきます。茶道に興味がある方は、ぜひ参考にしてください。
三千家の歴史
三千家は、千利休(せんのりきゅう)の孫である千宗旦(せんのそうたん)の時代に分かれた流派です。もともとは千家として一つの流派でしたが、宗旦の息子たちがそれぞれ異なる道を歩んだことから、三つの家元が誕生しました。
表千家(おもてせんけ)
表千家は、千宗旦の長男・千宗左(せんのそうさ)によって創設されました。表千家の特徴は、質素でありながら格調高い作法や道具を用いる点です。「真行草(しんぎょうそう)」という茶道の様式に忠実であり、格式を重んじる茶道の流れを受け継いでいます。
裏千家(うらせんけ)
裏千家は、千宗旦の次男・千宗室(せんのそうしつ)によって創設されました。現代において最も広く普及している流派であり、初心者にも親しみやすいのが特徴です。お茶を点てる際には、泡をよく立てる点が他の流派と異なります。また、社交的な茶会にも対応しやすい作法が多く、多くの茶道教室で採用されています。
武者小路千家(むしゃのこうじせんけ)
武者小路千家は、千宗旦の三男・千宗守(せんのそうしゅ)が創設しました。武者小路千家の特徴は、「よりシンプルに、実用的に」という精神に基づいている点です。他の流派と比べて、合理的な所作が多く、質実剛健な美学を重んじています。
三千家の作法の違い
三千家は同じ千家の流れを汲んでいるため、基本的な理念や作法は共通しています。しかし、細かな所作や使用する道具には違いがあります。ここでは、代表的な違いをいくつかご紹介します。
歩き方の違い
茶室に入る際の歩き方にも流派ごとの決まりがあります。
表千家は左足から入り、畳1枚を6歩で進みます。
裏千家は右足から入り、畳1枚を4歩で進みます。
武者小路千家は柱側の足から入り、畳1枚を6歩で進みます(右足・左足の指定はありません)。
茶室を出る際は、表千家・裏千家では入室時と逆の足から出ますが、武者小路千家には特に決まりはありません。
帛紗(ふくさ)の色
お茶を点てる際に使う帛紗(ふくさ)の色も流派によって異なります。
表千家と武者小路千家では、男性は紫、女性は朱色です。
裏千家では、男性は紫、女性は赤色です。
どの流派でも、基本的には無地の帛紗を使用します。
お辞儀の仕方
お辞儀の仕方にも違いがあります。
表千家では、手を八の字に開いてつき、男性は20cm、女性は7~8cmの間隔をあけてお辞儀をします。
裏千家では、表千家と同様ですが、お辞儀の深さに「真・行・草」の3種類があり、場面によって使い分けます。
武者小路千家では、両手を軽く合わせて膝の前に置き、背筋を伸ばしてお辞儀をします。
座り方
正座の際の膝の開き方も異なります。
表千家では、男性は安定する幅に両膝を開き、女性はこぶし1個分ほど開けて座ります。
裏千家では、男性はこぶし2個分ほど開けて座り、女性は表千家と同じくこぶし1個分ほど開けます。
武者小路千家では、男性はこぶし1個分、女性は膝を開けずに座ります。
菓子器の違い
菓子器の形状にも違いがあります。
表千家と武者小路千家では、蓋つきで中の菓子が見えない菓子器を用います。
裏千家では、蓋がなく、菓子が見える器を使用します。
お茶の点て方
表千家と武者小路千家では、お茶をあまり泡立てません。お茶本来の味を楽しむことを重視しているため、泡は控えめです。
一方、裏千家ではお茶をよく泡立てるため、口当たりがふわりとしたものになります。
まとめ
茶道の作法は流派によって微妙に異なりますが、地域のイベントなどで開催される茶席に参加するときは、相手の流派にこだわる必要はありません。お茶やお菓子をいただく手順や、畳の縁を踏まないといった基本的な作法さえ守っていれば特に問題はないでしょう。
「茶席に参加する礼儀として作法を知っておきたい」というときは、一般的に普及している裏千家の作法を身につけておくとよいでしょう。
また、茶席に参加したり、ドラマなどで茶席のシーンを見たりしたときに、作法から流派を推測してみるのも面白いかもしれませんね。