表千家、裏千家、武者小路千家の違い。 その2:所作
三千家の所作の違いについてご紹介します。
茶道の精神を表す所作
茶道では流派によって使用する道具に違いがあるだけではなく、座り方やお辞儀の仕方といった所作にも違いがあります。この違いは、伝統的で格式高く「詫び寂び」の精神を重視する表千家、開かれた茶道として多くの人が茶道に親しめることを大切にする裏千家、伝統を重んじながらも無駄を省いた武者小路千家という、それぞれの流派が持つ茶道の精神の違いといえるかもしれません。
今回は三千家の所作の違いについてご紹介します。
襖の開け閉め
茶道では、襖の正面に座って襖を開け閉めします。
【表千家】
1:近い方の手を襖の引き手にかけ、襖を2/3程開ける
2:下から30cm程の場所に反対の手をかけて全部開けて入る
3:引き手に近いほうの手で2/3程閉めたあと、反対の手で全部閉める
【裏千家】
1:近い方の手を襖の引き手にかけ、襖に手が入る程度開ける
2:その手を下から24cm程の場所にかけ、体半分くらいまで開ける
3:反対の手で全部開けきらない程度に開けて入る
4:開けた時に手をかけた場所を逆手に持って真ん中まで引き出す
5:反対の手に持ち替えて建てつけまで引き、その手を引き手にかけて閉め切る
【武者小路千家】
1:近い方の手を襖の引き手にかけ、1/3程開ける
2:反対の手で襖の下の部分を押し、襖の3/4程を開け手はいる
3:体を襖に対して斜めにし(外から閉める場合は茶道口の正面に座る)、引く方向の手で下を摘まんで7割程引く
4:反対の手で閉め切る
座敷への入り方と歩き方
座敷への入り方や歩き方も流派によって違いがあります。
【表千家】
1:扇子を前において茶室の入り口に座り、襖を開け、軽く一礼
2:扇子を前に進めて畳に両手をつき、軽く腰を浮かせてにじって入る
3:右手に扇子を持って立ち上がり、「左足から」畳1枚を「6歩」で歩いて席に着く(茶室を出るときは右足から出る)
【裏千家】
1:扇子の要が右向きになるように膝の前に置いて座り、襖を開ける
2:扇子を前にしてにじりながら座ったまま入る
3:扇子を持って立ち上がり、「右足から」畳1枚を「4歩」で歩いて席に着く(茶室を出るときは左足から出る)
【武者小路千家】
1:扇子を前において茶室の入り口に座り、襖を開ける
2:両手をついて一礼し、右手に扇子を持って立ち上がり、「柱側の足」から1畳を「6歩」で歩いて席に着く(茶室を出るときの定めはない)
正座
男性は、表千家では安定する広さに膝の間をあけ、裏千家では膝の間を拳2つ分あけて座ります。女性は表千家・裏千家共に膝の間を拳1つ分あけます。
一方、武者小路千家では、男性は拳1つ分、女性は膝の間をあけずに座ります。
お辞儀
表千家と裏千家は、男性は両手を20cm位、女性は7~8cm位開けて八の字に手をついてお辞儀します。
表千家では、横から見て30度くらい体を曲げるのに対し、裏千家はお腹が膝に着くほど曲げる「真」、表千家と同じくらい曲げる「行」、軽くお辞儀をする程度の「草」の3種類を場面に合わせて行います。
武者小路千家は、男女ともに左手が前になるよう膝の前で軽く合わせてから指先を膝前の畳に軽く付け、背筋を伸ばしてお辞儀します。
まとめ
茶道の所作、作法は流派や性別によって微妙に異なるため、参加する茶会の流派が自分が学んだ流派とは違うと不安を感じるかもしれません。
しかし、茶席や茶会において最も重要なことは、自分以外の客や亭主に礼儀や敬意を払うことですので、それさえ伝わるのであれば振る舞いが流派違いでもマナー違反にはなりません。