琉球漆器について教えてください。
琉球漆器についてご説明します。
琉球漆器とは
沖縄の工芸品といえば「琉球ガラス」や鮮やかな赤や黄色の「琉球紅型」のイメージがありますが、古くから漆器も数多くつくられています。
古くから中国との貿易が盛んだった琉球王国で育まれた琉球漆器は、有名な輪島塗や会津漆器とは全く異なる特徴と魅力を持っています。
琉球漆器の歴史
19世紀に沖縄県が日本に併合される以前、沖縄県は「琉球王国」と呼ばれる独立国で、現在の中国、日本、タイ、ベトナムなどと盛んに交易をおこなっていました。
特に中国とは文化的なかかわりも深く、さまざまな文化や技術が中国から伝えられ、14世紀から15世紀にかけて漆塗りの技法が伝えられたといわれています。
この漆塗りの技法は琉球王国で独自の発展を遂げ、やがて「琉球漆器」という形になり、中国や日本、タイ、マレーシアへの献上品としても使われました。
日本に併合された後、それまでは琉球王国直轄で作られていた琉球漆器は民間で作られるようになり20世紀初頭には多くの職人がうまれましたが、第二次世界大戦によって壊滅的な打撃をうけます。
終戦後は進駐軍向けの土産物として再興しましたが、現在は職人が減少傾向にあるようです。
琉球漆器の特徴
輪島塗や会津漆器などの東北の漆器では、ケヤキやヒバ、ホオノキなどが素材として使われますが、琉球漆器はデイゴ、ガジュマルといった沖縄県特有の素材が使われています。
豚の血等を使った「豚血下地(とんけつしたじ)」の上に、油を加え光沢を持たせた朱色や黒の漆を上塗りする「花塗り」という技法が用いられ、刷毛のあとやムラのない滑らかな質感と、鮮やかな色が特徴です。
また琉球漆器では、天然顔料である「真朱」のほかに、水銀と硫黄を混ぜて作った「銀朱(ぎんしゅ)」と呼ばれる顔料が好んで使われていました。
銀朱は、真朱に比べて黄色みがかった鮮やかな朱色をしており、その鮮やかな美しさはほかに例を見ないといわれています。
技法
琉球漆器では、刃物で彫った文様に金粉や金箔を押し付けて装飾する「沈金(ちんきん)」や、貝殻の真珠層をはめ込んで装飾する「螺鈿(らでん)」などのほか、中国の「堆朱(ついしゅ)」と言う技法からヒントを得て開発された「堆錦(ついきん)」という独自の技法が使われています。
堆錦は、生漆を加熱して水分を蒸発させて作る「黒め漆」に顔料を混ぜた後、金づちで叩いて薄く伸ばして作る「堆錦餅」を貼り付ける装飾法です。
立体的な表現ができるだけではなく、混ぜる顔料によってさまざまな色を表現できるため、ほかの漆器にはない独特の味わいを持っています。
まとめ
琉球漆器は鮮やかな色合いや堆錦技法だけではなく、大陸的なおおらかさのある形や中華的な雰囲気をもつ絵柄などの特徴を持っています。
また、日常的に使われる食器などのほか、祭司や儀式で使用された足付盆と酒器、中国への献上品として作られたとされる「東道盆(とぅんだーぼん)」など、美しい装飾が施された名品も数多く存在しており、奥深い魅力にあふれています。