秋や冬に飾れる掛け軸にはどんなものがありますか?
秋や冬に飾れる掛け軸についてご紹介します。
季節で使い分ける掛け軸
床の間を飾る掛け軸には、禅語が書かれた掛け軸や、龍虎など季節感のない題材で年中かけられる「普段掛け」と、季節の風景や風物詩などを題材とした飾れる季節が限定される「季節掛け」があります。
しかし、季節を選ばずに飾れる普段掛けとして利用される山水画などでも描かれている内容によっては使用できる季節がある程度限られるなど判断が難しく、どの時期にどの掛け軸を飾ればよいかわからないという方も少なくないようです。
今回は、秋冬に飾れる掛け軸の画題をご紹介します。
秋の掛け軸
秋はお盆明けから9月末頃までの初秋、10月から11月末頃までの中秋、秋が終わり冬に移り変わる12月頃を指す晩秋の三つに分けられます。
花もまだ盛りの初秋は、「ススキ」、「桔梗」、「女郎花」、「藤袴」、「葛」、「撫子」、「萩」といった秋の七草や、九月の重陽の節句にちなんだ「菊」などが最適です。この時期はまだ暑さを感じることが多いため、少し涼しげでしっとりとした落ち着きのある色合いの絵が好まれます。
秋真っ盛りの中秋は、初秋から飾れる秋の草花に加え、実りの季節を感じさせる「柿」や「稲穂」、山を彩る「紅葉」などが最適な季節です。気温が下がり肌寒さを感じやすいこの時期は、赤や黄、橙などの暖かい色あいが鮮やかな絵が好まれます。
晩秋は冬至の頃から冬の掛け軸を飾れるようになるほか、お正月を意識した年末向きの掛け軸を飾り始める時期のため、中秋の掛け軸のまま冬至まで過ごし、冬や年末の掛け軸に切り替えるという方も少なくありません。
飾れる期間も短いため、晩秋用の掛け軸をあえて用意する必要はないといえますが、この時期だけの掛け軸を楽しみたいという場合は、晩秋から花を咲かせる「山茶花」や、晩秋に赤い実をつける「烏瓜」を飾るとよいでしょう。
年末年始の掛け軸
その年を締めくくり、新しい年を迎えるための準備を始める12月中旬以降から正月までは冬の掛け軸を飾ってもよいですが、無病息災や家内安全、来年の発展を祈る掛け軸が好まれます。「無事」「無病息災」などの書のほか、普段掛けにも使われる「虎」「龍」「竹に雀」などもよいでしょう。雪や南天など冬を感じさせるモチーフが盛り込まれていると季節感もあり年末のシーズンに最適です。
正月は「正月掛け」や「慶事掛け」を飾ります。旭日、富士山、鶴亀、七福神など吉祥の掛け軸を飾るとよいでしょう。
冬の掛け軸
正月が過ぎると冬の掛け軸を飾る時期です。
冬は、寒さが厳しい1月から2月中旬頃までと、寒さが徐々に和らぐ2月中旬以降に分けられます。
寒さが厳しい2月中旬ごろまでは、紅白の色合いで縁起が良い「南天」のほか、「雪景色」や「椿」「寒牡丹」「水仙」といった冬の風景や冬の花が最適です。南天に似た赤い実をつける「千両」や「万両」も縁起がよく、冬に好まれる画題です。
2月中旬以降は春を意識してその時期に合わせた花木の掛け軸が好まれます。3月は「桃」や「梅」、4月は「桜」や「木蓮」が良いでしょう。このほか「木瓜」「菜の花」「雪割草」といった春の到来を感じさせる画題も飾れます。
まとめ
秋冬はその季節に咲く草花を題材にした掛け軸のほか、秋は月、冬は雪などその季節の風景を描いた山水画や浮世絵なども適しています。書であればその時期にあった季語を含んだ言葉や句などがよいでしょう。