日本刀の顔にあたる、ぼうし(帽子、鋩子)とは?
日本刀のぼうしについてご紹介します。
日本刀の「ぼうし」とは
日本刀の「ぼうし」とは、切っ先部分についている焼入れ模様のことで、一般的には「鋩子」と表記されますが「帽子」と書くこともあります。
鋩子は制作された時代や地域、職人などによって異なる特徴があるため、日本刀を鑑定するための重要であるとともに、芸術的な鑑賞ポイントでもあります。
日本刀の鋩子とはどのようなものなのでしょうか。
主な鋩子の種類
焼き付けを行った際につく模様を一般的に「刃文」と呼びますが、刃文というのは刀身部分だけで、切っ先部分は頭身と区別するために「鋩子」と呼びます。
これは、刀身の刃文と鋩子の模様は必ずしも一致しないため、区別する必要があるためです。
例えば、古刀の場合は刀身の刃文が波のように乱れていると鋩子も同様に乱れていますが、新刀の場合は鋩子は乱れません。
鋩子は焼入れの方法などによってさまざまな模様になりますが、模様の形によって種類がわけられています。
【焼き詰め】
焼入れがある部分と焼入れがない部分の境界が棟ぢぴったりと止まっている鋩子。
【掃きかけ】
焼入れ部分と焼入れをしていない部分の境界が筆や刷毛で掃いたように霞んで見える鋩子のことです。光に当てると境界の部分の大きな粒子が見える「沸(にえ)」が筋状になっているのがわかります。
【火炎】
掃きかけ鋩子に似ていますが、模様が切っ先の先端に向かって流れて尖り、立ち上がった炎のような形をしています。火焔とも表記します。
【乱れ込み】
切っ先の反りが始まる横手筋と呼ばれる部分から先が波のように乱れている鋩子。
【丁字乱れ込み】
乱れ込みに似た鋩子で、境界部分の模様が緩やかな波上ではなく丁子の実のような小さな丸型に飛び出しているのが特徴です。
【地蔵】
乱れ込みに似た鋩子で、切っ先の先端に向かって飛び出た模様が大きな丸型になり「地蔵」の頭のように見える鋩子。
鋩子の「返り」
焼き詰め鋩子と一部の乱れ込み鋩子以外は、焼入れがある部分と焼入れがない部分の境界は棟側で切っ先側から刀身側に向かって戻っています。この部分を「返り」といい、刃側からどのような形で返るかによって切っ先の先端部分の模様の形状が変わります。
先端部分の模様が大きく弧を描くように返っているものを「大丸」、小さな弧を描いている場合は「小丸」といい、その中間を「中丸」といいます。
また、返りが下の方まで長い場合は「返りが深い」といい、返りが短い場合は「堅く止める」といいます。
まとめ
鋩子は模様の種類と返りの状態を組み合わせて表現します。
例えば、鋩子の模様が「乱れ込み」で、返りが「小丸」の場合は「鋩子は乱れ込んで小丸に返る」というように表現します。返りがなく焼き詰めになっている場合は「乱れ込んで焼き詰める」などといいます。
表現の仕方を知っていると、聞いただけでどのような鋩子かを想像することが容易になり、時代や産地ごとの鋩子の特徴も覚えていれば日本刀を鑑賞する楽しみも増えそうです。