実用的ながら鑑賞美も兼ねそなえた煙管(キセル)。その種類と骨董的価値について。
煙管の種類と骨董的価値についてご紹介します。
和装小物としても人気の煙管
時代劇や歌舞伎などにステータスシンボルやファッションとして登場することがある煙管は、現在でも「和装小物の一つ」として人気を集めています。
古い煙管をコレクションして、装いや気分に合わせて使い分ける人はもちろん、優雅な印象の見た目から実用品ではなく鑑賞用に収集している方も少なくありません。煙管にはどのような種類があり、どのような価値があるのでしょうか。
煙管の歴史
煙管は江戸時代に登場した日本独自の喫煙具で、西洋の喫煙具である「パイプ」と似た構造をしています。
江戸時代の煙管は主に屋内で使用されており、刻んだタバコの葉を入れる「火皿」は大きく、全体的に長く作られていました。これはタバコ葉の刻みがまだ荒く、短いと雑味が強かったためとも言われています。
また、吉原の遊女などの間では格が上がると帯の幅が広くなるというしきたりがあったため、帯にさす煙管もそれに合わせて長くなり、煙管の長さで格を見極めることができました。遊女の煙管は中間の「羅宇(らう・らお)」と呼ばれる管の部分が赤く塗られており、羅宇が特に長い煙管は「長羅宇」とも呼ばれています。
また、江戸時代に刀を持つことが出来なかった町人が護身用として「喧嘩煙管」と呼ばれる太くて重い煙管を持つこともありました。
幕末ごろになると吸い口の金属部分に彫刻を施したものが登場するなど、ファッション性が高い煙管が登場しますが、巻きたばこが登場したことで徐々に人気が低迷していきました。
煙管の種類
煙管には大きく分けて、全体が金属など一つの素材で出来ている「延べ煙管」と、中間部分のみが竹などでできている「羅宇煙管」があります。
どちらもタバコの葉を詰める部分を「火皿」、口をつける部分を「吸い口」という点は共通していますが、延べ煙管の場合は中間部分を「管」と呼ぶのに対し、羅宇煙管は中間を「羅宇」、火皿と羅宇を繋ぐ部分を「雁首」と呼ぶといった違いがあります。金属部分は金、銀、銅、鉄、錫、亜鉛、真鍮が多く、羅宇は竹でできているのが一般的です。
延べ煙管、羅宇煙管共に形状の異なるいくつかの種類に分けることができます。
【延べ煙管】
・延べ煙管…全体が一つの素材でできた煙管
・なたまめ…平たく作られた煙管でやや短い。刀豆、鉈豆と書く
・手綱(たづな)…神社の手綱のような形の煙管
【羅宇煙管】
・石州(せきしゅう)…茶人「石州」が好んだ形。雁首と吸い口が円筒形
・如心(じょしん)…石州に似た形状。雁首と吸い口が六角になっている
・光台寺…雁首と吸い口が短く丸みを帯びた形状の煙管
煙管の価値
煙管の価値は作られた年代、状態、素材、希少性などによって決まります。
例えば、時代や形、状態が同程度であれば、金属部分が真鍮よりも銀の方が価値が高くなります。形や素材などが同じであれば、時代的古い煙管の方が高い価値がつきます。また、彫刻や螺鈿などが施されている物、陶器などでできた物などはさらに高い価値がつきます。
まとめ
煙管は実用品であったため傷や汚れなどがついていることが多く、一般的な素材・形状の場合は高い価値がつかないこともあります。特に、明治時代の煙管は価値がつきにくいといえるでしょう。
しかし、江戸時代の煙管や名工・金工師の作などは高い価値がつくこともありますので、お手元に煙管をお持ちの方は、一度査定に出してみてはいかがでしょうか。