茶碗の産地分けでよく聞く唐物、高麗物、和物(国焼)の違いは何ですか?
唐物、高麗物、和物(国焼)の違いをご紹介します。
茶碗の分類方法の一つ
茶碗の分類方法には、時代による分類、磁器・陶器などの分類のほか、産地の分類があります。
産地の分類には大きく分けて「唐物」「高麗物」「和物(国焼)」の3種類があり、そこからさらに細かく分類することができます。
では、「唐物」「高麗物」「和物(国焼)」とはどこが違うのでしょうか。
唐物
「唐物」は、一般的に中国産の茶碗を指します。
古くからさまざまな地域で茶碗が作られてきた中国産の唐物茶碗は、歴史に裏付けられた高い技術で作られていることが特徴です。
高貴で繊細な印象を持つ茶碗が多く、日本では千利休による「侘び茶」確立以前から貴族や寺院、武家に重宝されていました。
【唐物茶碗の一例】
- 天目茶碗
- 珠光青磁(じゅこうせいじ)
- 景徳鎮(けいとくちん)
- 呉須赤絵(ごすあかえ)
また、中国以外に安南(あんなん…現在のベトナム)で焼かれた茶碗も「唐物」と呼ぶことがあります。中国の茶碗とは対照的に、素朴な作風が特徴です。
高麗物
高麗物は朝鮮半島で作られた茶碗で、素朴で簡素な作りや、「ゆがみ」があることが特長です。
「高麗」と呼ばれていることから高麗時代の茶碗を指しているような印象を受けますが、高麗茶碗と呼ばれる茶碗の多くは高麗時代ではなく朝鮮王朝時代に作られています。
千利休による「侘び茶」が隆盛を極めるにつれ、茶席で用いられる茶碗も精緻で華やかな印象がつよい「唐物」ではなく、素朴な雰囲気がある茶碗が好まれるようになりました。
天正年間(信長〜秀吉の全盛期)には高麗茶碗が流行していたといわれるほか、朝鮮半島から渡ってきた作陶家が日本で作陶を行うなど、日本の茶碗作りにも大きな影響を与えています。
【高麗物の一例】
- 井戸茶碗
- 粉青沙器
また、井戸茶碗のなかには「大井戸」「小井戸(古井戸)」「青井戸」「井戸脇」、粉青沙器のなかには「三島」「粉引」「刷毛目」といった、使用されている技法や外観などによる分類があります。
和物(国焼茶碗)
国焼茶碗は中国の「唐物」、朝鮮半島の「高麗茶碗」に対し、日本で作られた茶碗をさしています。
ただし、江戸時代の茶人の間で「本釜」とされていた瀬戸焼だけは国焼のなかに含まれない場合もあります。
【国焼茶碗の一例】
- 楽焼
- 萩焼
- 唐津焼
- 志野焼
- 織部焼
- 伊万里焼
茶碗は土や釉薬、窯の焼成温度などによって異なる味わいが出るため、同じ「国焼」でも
「楽焼」と「志野焼」では印象がかなり異なります。
また、国焼茶碗の多くは「わび・さび」を重んじる侘び茶に合う「利休好み」の素朴な作風が多いのですが、織部焼は千利休の弟子である古田織部が好んだ、奇抜で斬新な「織部好み」で、ほかの茶碗とは全く異なる特徴を持っています。
また、中国の景徳鎮に大きな影響を受けた伊万里焼は、国焼茶碗でありながら唐物のような雰囲気を持っています。
まとめ
唐物、高麗物、和物にはそれぞれ異なった特徴と魅力があり、優れた名品も数多く作られています。
また、日本の国宝に指定されている茶碗は、唐物5点、高麗物1点、和物2点となっています。