仏像の素材には何がありますか?またそのお手入れ・保管方法について教えてください。
仏像の素材とお手入れ、保管方法をご紹介します。
仏像の素材は大きく分けて5種類
世界最古の仏像は、現在のアフガニスタン東部からパキスタン北西部にかけて存在した「ガンダーラ」で紀元前1世紀に作られた釈迦如来像だといわれていますが、日本に仏像が伝わってきたのはそれよりもずっと後の6世紀、仏教伝来とともに伝えられました。
インドなどで見られる初期の仏像は石で作られた「石仏」が多いのですが、日本では森林資源が多かったことなどの理由から木で作られるようになるなど、時代や地域によってさまざまな素材で作られるようになりました。
現在みられる仏像は「石造」「金属」「木造」「塑造」「乾漆造」の5種類があります。
石造
石で作られた仏像は、切り取った石を掘って作られた独立像と、自然の岩山に直接彫って作られた磨崖仏(まがいぶつ)の2種類があります。
磨崖仏は持ち運びできませんので、個人で所有できるのは独立像となります。
石仏はガンダーラ仏やマトゥラー仏などの初期仏教の作品に多く見られるほか、日本では江戸時代ごろに多く制作され、現存している日本製の石仏の約8割は江戸時代の作品だといわれています。
金属
金属製の仏像は、金、銀、銅、鍮石(ちゆうじやく)、白蠟、鉛、錫、鉄など、さまざまな金属で作られた仏像がありますが、最も多いのは溶かした青銅で形を作り、その上に金メッキを施した「金銅仏」と呼ばれる仏像です。
インド、中国、ビルマはもちろん日本でも数多く制作され、有名な金銅仏としては「奈良の大仏」が挙げられます。
木造
日本の仏像の大半を占めている木造の仏像は、大きく分けて一本の木材から作る「一木造(いちぼくづくり)」と、数本の木材を組み合わせて作る「寄木造(よせぎづくり)」の二種類があります。
一本の木から作られる一木造の仏像は奈良時代末期から平安前期に作られた作品が多く、それ以降の作品の多くは寄木造です。
使用される木はヒノキが多く、カヤ、カツラ、サクラのほか、白檀や黒檀で作られた仏像もあります。
塑造
木で組んだ骨組みを縄で巻いた後、粘土を塗って肉付けする塑造の仏像は、主に日本で仏教が興隆しはじめた7世紀後半から8世紀半ばの天平時代に制作されました。
乾漆造
粘土や木で作った原型の上に漆で麻布を貼り付けていく方法で作った乾漆の仏像は、7世紀から9世紀の作品が多く、ほかの時代の作品はあまり見られません。
お手入れと保管方法
仏像の素材はさまざまですが、いずれの場合もお手入れと保管の方法は共通しています。
お手入れ方法
毛先の柔らかい筆や刷毛、乾いた柔らかい布を使って優しくほこりを払ってください。
カメラのレンズ掃除に使うブロワ―などがあれば、触ることなく掃除ができます。
触るときは手袋着用し、直接手で触れないよう注意して下さい。
保管方法
保管するときは高温・多湿の環境を避けてください。
特に木材は湿度が高いとカビの発生、乾燥しすぎると変形やひび割れの原因となりますので、温度や湿度が一定となるよう注意しましょう。
また、紫外線は変色や脱色、塗装の剥離の原因となりますので避けてください。
特に直射日光は表面や内部の劣化を起こしやすいので、虫干しなどをする際は必ず日陰で行ってください。
仏像を入れる木箱などがある場合は、木箱に入れて保存しましょう。
まとめ
仏像は作られた時代や地域によって素材や製造法だけではなく、表情や持物、全体的な印象など表現手法にも違いがあり、奥深い魅力を持った芸術品です。
適切なお手入れと保管で、その美しさと魅力をいつまでも保つことができるとよいですね。