温かみがある飴色が特徴の大樋焼(おおひやき)とは?
大樋焼(おおひやき)についてご紹介します。
石川県の伝統工芸「大樋焼」
輪島塗や加賀友禅、金沢漆器など石川県には数多くの伝統工芸が存在しますが、「大樋焼」も石川県を代表する伝統工芸です。
石川県の陶磁器といえば鮮やかな色彩で彩られた「九谷焼」が有名ですが、大樋焼は九谷焼に比べると質素で素朴な印象があり、現在でも「温かみがある」「シンプルで使いやすい」などの理由で愛されています。
果たして、大樋焼とはどのような焼物なのでしょうか。
大樋焼の歴史
大樋焼は、寛永6年(1666年:江戸時代初期)に裏千家4代目家元 千宗室とともに加賀を訪れた陶工 長左衛門が、現在の金沢市大樋町に居を構え、窯を開いたことから始まりました。
長左衛門は千家十職の一つである楽家4代に師事した最高弟で、優れた技術で作られる大樋焼は当時の藩主 前田綱紀から手厚い保護を受け、加賀藩から「大樋」の姓を与えられた藩の陶器御用を勤めます。以来、明治維新までは藩の「御庭焼」の地位を確立しました。。
当初は、黒や赤の釉薬を使用していましたが、京都の楽家から楽焼と同じ黒や赤の釉を使うことを禁止され、独自に「飴釉」という飴色の釉薬を開発します。
「飴色の器に茶の緑が映える」ということから愛された大樋焼ですが、明治維新以降は「御庭焼」の地位を失って窮地に立たされます。
しかし、昭和に起こった「茶陶ブーム」の影響で再び脚光を浴び、全国的に知られるようになりました。
大樋焼の特徴
大樋焼は楽家の最高弟である長左衛門が始めたということもあり、全体的な雰囲気は楽焼に似ています。
楽焼との大きな違いは、黒や赤の釉の使用を禁じられたことがきっかけで生まれた「飴釉」です。質素で温かみがある飴色は、使い込むごとに深みを増し、器を育てる喜びを感じさせてくれます。
また、ろくろを使わず「手びねり」で形を作ったあと、ヘラやカンナで形を整える、950〜1000度で本焼きを行ったあと窯から取り出して急激に冷やすなど、製法は楽焼と共通しているため、楽焼の「脇窯」としても知られる大樋焼は、手に持ったときの軽さや口当たりの柔らかさなど、楽焼と似た特徴を持っています。
まとめ
茶の湯のための器として楽焼から派生し、独自の発展を遂げた大樋焼の作品は抹茶茶碗が中心ですが、急須や香合、湯呑なども作られています。
また、二色の釉を使った作品やヘラで模様をつけた作品などもあり、楽焼とは一味違った魅力を持っています。
大樋焼は大樋長左衛門窯の敷地内にある「大樋美術館」や「金沢市立中村記念美術館」で鑑賞できますので、近くを訪ねる機会ありましたら、ぜひ寄ってみてはいかがでしょうか。