超一流の有名作家の作品だけど、手が届く。版画の魅力4つ。
版画の魅力を4つご紹介します。
手描きとは一味違う「版画」
版画には木版画、エッチング、シルクスクリーン、リトグラフなど様々な技法があります。
技法や使用するインクによって微妙に異なりますが、水彩画よりも鮮やかな色とメリハリ、油彩画よりもフラットで透明感があることが特徴です。
版画にはどのような魅力があるのでしょうか。
「本物」を入手しやすい
版画と手描きの大きな特徴は、「版画は原板があれば何枚も作れる」ということです。
もちろん、版を重ねるごとに原板が摩耗するなどの理由から「無限に刷ることができる」というわけではありませんし、一枚しか刷っていない作品も存在します。
しかし、200枚刷れば「本物の作品」が200枚存在するということです。一枚しかない本物を入手するよりもずっと手軽に、より多くの人が本物の作品を手に入れることができます。
また、作られた枚数が多いと一枚当たりの価格も下がります。
水彩画や油彩画などは「絵を買えるのはお金持ちだけ」ということも少なくありませんが、版画であればお金持ちというほどでなくても有名作家の作品に手が届くということがあります。
技法によって異なる魅力がある
版画にはさまざまな技法があり、技法によって使用される原版の素材も異なります。
例えば、木版画は木の板を彫刻刀で彫ることで線や面を浮き出していきます。柔らかい木を使って彫るため、木版画の線はやや太くどっしりとした重厚感があります。
一方、銅板に「ニードル」と呼ばれる道具を使って線を描いていく「エッチング」は細い線で細密な絵を描くことができます。繊細で優しい雰囲気や荒々しくとがった印象など、様々な風合いを表現することが可能です。
技法ごとに異なる魅力を味わうことができるのも版画の魅力といえます。
時間を切り取ったような佇まい
紙に絵具を塗りつけていく手描きの作品、特に油彩画は筆などの動きを感じられますが、ローラーなどの道具を使って均一にインクを乗せていく版画は原画を版に彫って刷るという工程を経ているため、作品ににじみ出る作者の感情が手描きの作品よりも薄く、そのため「作中の人物」や「作中の風景」がより鮮明に浮き出されます。
このことから、版画作品は作者本人の感情とは関係ない「時間」という物体を切り取ってそのまま閉じ込めたような佇まいがあり、鑑賞する人がより作品に寄り添いやすくなります。
立体感がある
絵を描くというのは、いうなれば「紙の上にインクを均一に載せていく作業」であり、これは水彩や油彩のような手描きでも版画でも同じです。
ただし、水彩や油彩は絵具を取った量や筆の動きなどによる「ムラ」ができるほか、物体のへこみを描いているのに「物体を書いた上に影の色を重ねる」ことになるため、絵具の厚みから「前に出ているように見えてしまう」など、絵のなかの距離感と見た目の距離感が一致しないという事態が起こりえます。
しかし、版画は奥にあるものから手前に向かって均一に絵具を重ねて行くため、「奥にある物は奥に、手前にある物は手前に」というように、絵のなかの距離感と見た面の距離感が一致ます。
さらに、面が均一に盛り上がっているため、照明の当て方や鑑賞する角度を変えると絵のなかに「絵具の影」が現れ、独特な立体感を楽しむことができます。
まとめ
版画と手描き作品は「平面の芸術作品」という大きなくくりとしては同じですが、でき上がる作品の特徴や魅力は異なります。
一般的には手描き作品の方が希少価値が高く、価格も手描き作品の方が高い傾向にあるため、「版画は手描きよりも価値が低い」という方がいますが、それぞれまったく違う進化を遂げたジャンルなので、どちらの方が優れている・劣っているということはありません。
機会があればぜひ、水彩画や油彩画とは一味違う版画作品の魅力を味わってください。