漆を使った装飾と技法にはどんなものがありますか?
漆の装飾技法をご説明します。
漆をつかった装飾技法
蒔絵
漆で作られた器の表面に、漆で絵、模様、文字などを描く技法です。その内容により細かく分けられます。
・平蒔絵:絵を描いた後に金、銀、スズなどの粉をまき乾燥させます。その後、枝の部分だけに透明な漆を塗って固定させ、絵の部分に凹凸ができるのが特徴です。
・研ぎ出し蒔絵:絵を描いた部分に漆を塗って乾燥させ、その後絵の部分を研いで摺漆(すりうるし)を塗り、油や研ぎ石の粉で磨きます。絵をぼんやりと表現する技法です。
・高蒔絵:最初の漆を塗る際に、絵を描く部分を透明な漆などを使って盛り上げておきます。立体感がでるのが特徴です。
根来塗り
黒い漆を下地として塗った上に朱色の漆を塗り重ねます。仕上がった際は朱色ですが、長い間使っているうちに下地の黒が見えてくることで味わいが出ます。
石目塗・石地塗
漆の表面に炭や乾いた漆の粉をつけておくことで、石の表面のような凸凹感を出す技法です。刀の鞘を塗る際にもこの技法が使われていました。
消金地
漆が乾く前に金粉を細かくしたものを2回つけます。全体的に優しい金の光を出す技法です。会津若松の地方独特の技法のため会津金地ともよばれます。
青貝細工、青貝塗
貝を薄く削ったものを漆の表面に貼り模様を作ります。貝はアワビや蝶貝、夜光貝、朱雀貝などが使用され、裏面に色をつけることもあります。その薄さは一般的に0.3ミリほどで職人によっては0.1mmまでの薄さになることもあり、主に山、花、鳥など自然のものが描かれます。
曙塗
下地の朱色の後に仕上げで黒を塗り、朱色部分がぼんやりと見えるようにする技法です。曙の光を連想させることからこの名前がつきました。
髪染塗
漆を数十回にわたり塗り重ねて模様をつける技法です。津軽の代表的な技法で主に以下の4種類あります。
・唐塗:塗りと剥がしを繰り返し、複雑な斑点模様に仕上げます。
・七々子塗り:菜の花の種をまいて模様をつくります。
・紋紗塗り:籾殻をつけて研ぎ出したものです・
・錦塗:七々子塗りの技法を用いて、スズの粉を使い唐草や錦を連想させる模様にするものです。
このなかで錦塗ができる職人は非常に少なく価値が高いです。
漆は艶が最大の特徴
漆の最大の特徴はそのツヤで、日本四大漆器として紀州漆器、山中漆器、会津漆器、越前漆器があります。
漆の基本色は黒と朱色で、表現技法により様々なデザインが施されており、あえてツヤを抑えて味を出したものもあります。
漆ができるまで
漆の木は中国が原産のウルシ属の落葉樹で10-15年の樹齢のものからしかとることができません。樹液の分泌が多くなる6月に、木に傷をつけてしみ出る樹液をとりますが、1本の漆の木から200gほどしかとれない貴重なものです。この樹液をろ過したものが漆の原材料となります。
まとめ
漆は海外からはJAPANとよばれるほど日本を代表する伝統工芸です。興味をもてばもつほど、その様々な表現に魅了されることでしょう。