柄香炉とはどんなものですか?
柄香炉についてご紹介します。
聖徳太子が持っている「柄香炉」
古来より仏教では、香を焚くことは空間を清め邪気を払い、仏に供物をささげることとして考えられてきました。
日本では仏教の伝来とともに香を焚く習慣が始まったとみられており、香を焚くための道具である香炉も飛鳥時代に伝わり、法隆寺の玉虫厨子の台座の部分には柄のついた香炉「柄香炉」を持つ二比丘像が描かれています。
また、少年時代の聖徳太子を描いた絵図や立像は柄香炉を持ったものが多く残されています。
今回は、柄香炉についてご紹介します。
柄香炉とは
柄香炉はその名の通り「柄が付いた香炉」のことです。インドで発生し中国を経て仏教とともに日本にもたらされたと考えられていますが、詳しい資料はほとんど残されておらず、その発祥や伝来の経緯は定かではありません。
柄香炉は香を焚く炉と持ち手となる柄で構成されており、全体的に柄杓のような形をしています。ただし、柄香炉の柄は柄杓のようにまっすぐではなく、末端が下向きに折れ曲がった形をしており、机などに置いた時に炉が浮き上がったりしないようになっています。
また、一般的な香炉は僧、貴族、武士、庶民など幅広い僧が使うのに対し、柄香炉は基本的に僧しか使用しません。仏具として日本に入ってきた香炉のうち、一般大衆化していったのが据え置きで使う香炉であるのに対し、仏具として特化していったのが柄香炉と考えるとよいでしょう。
柄香炉は法要や儀式を行う際、香を焚いて持ち歩き空間を清めるために使用します。持ち方や扱い方には細かな作法が決められており、持ち歩くときは必ず両手を使って持ちます。
柄香炉の素材と種類
柄香炉は、炉の部分がティーカップのような深い朝顔形、シンプルな円形、お椀型などがあります。
また、炉が蓮の花、座が蓮の葉、柄が蓮の茎の形になった柄香炉もあり、全体の形から「蓮華香炉」とも呼ばれます。
柄香炉は柄の末端の形状や細工によって呼び分けられ、末端が三又に分かれてカササギの尾のような形をしたものを「鵲尾(じゃくび)形柄香炉」、末端が下方に向かって折れ曲がったあともう一度折れ曲がり、その上に獅子を取り付けた「獅子鎮柄香炉(ししちんえごうろ)」、瓶の形をした鎮子(おもり)が付いた「瓶鎮柄香炉(びょうちんえごうろ)」などがあります。
また、全体が赤銅や白銅、真鍮といった銅合金で作られていることが多いですが、木製の柄香炉も存在しており、正倉院には金銀や玉をちりばめた紫檀の柄香炉も残されています。
まとめ
古くから僧が使う仏具として扱われてきた柄香炉は一般人にはなじみがない道具ではあるものの、現在は仏具店などで購入することができます。
また、東京国立博物館や法隆寺、中尊寺、東寺、新薬師寺などでも見ることができます。お寺では仏具一式を備える「礼盤」に置かれているので、観光などでお寺に行ったときは柄香炉にも注目してみてはいかがでしょうか。