版画の種類について。リトグラフとシルクスクリーンの違いを教えてください。
リトグラフとシルクスクリーンの違いをご紹介します。
手ごろな価格で買える版画
絵には油絵や水彩画、木版画などさまざまな種類がありますが、ポップアートやイラストレーションなど近現代の作品でよく見かけるのが「リトグラフ」と「シルクスクリーン」です。いずれも版画の一種で、一つの原版から複数の作品を製作できるため比較的手ごろな価格で絵画を購入できることから人気があります。
しかし、名前だけは知っていても実際にどのようなもので、どういう違いがあるかは意外と知られていません。リトグラフとシルクスクリーンにはどのような違いがあるのでしょうか。
リトグラフとは
リトグラフは彫るなどの方法で判を加工をせず、薬品を使ってインクがつく部分とつかない部分を作ることが特徴です。版に凹凸がなく平らであるため「平版画」と呼ばれることもあります。
また、リトグラフはギリシア語で石を意味する「lithos」が語源といわれており、大きな石灰岩を版に使っていたことから「石版画」と呼ばれることもあります。ただし現在は、アルミや亜鉛合金などの金属板を使用することも多いようです。
18世紀のドイツで発明され楽譜の複製に使われていましたが、次第に絵画に使われるようになりました。
シルクスクリーンとは
シルクスクリーンはシルクやメッシュなどを張った枠を使った方法です。何も処理を行っていない状態では、シルクやメッシュの裏に塗ったインクは隙間を通って表にしみ出しますが、ゴム状の薬品で隙間を埋める処理を行うと、処理をしていない部分はインクが通り、処理した部分はインクが通らなくなり、版として使うことができます。インクが穴を通って裏から表にうつることから「孔版画」といもいいます。
20世紀から多く使われるようになった比較的新しい技法で、絵画作品のほか、Tシャツやトートバッグなどの布製品にも利用されています。
リトグラフとシルクスクリーンの違い
リトグラフとシルクスクリーンの大きな違いは、リトグラフは「平版」、シルクスクリーンは「孔版」という製作技術の違いです。
また、リトグラフはクレヨンや鉛筆タッチや、水彩のタッチ、滲みなどを表現できるという特徴があり、肉筆に近い繊細な作品を作ることができます。
シルクスクリーンは色ムラなどが出にくく、発色がよいという特徴がありますが、リトグラフのような繊細な表現は難しく、やや平坦な印象があります。
ただし、重ねた色の数や作品の内容によっては見た目の違いはあまり感じられないかもしれません。
まとめ
リトグラフとシルクスクリーンは現代アート作品で見かけることが多く、油絵などと比べると価格が手ごろで入手しやすいため、もっとも身近な美術品といえるかもしれません。
作品としてはシルクスクリーンの方が多いですが、シルクスクリーンとリトグラフの両方を手がけている作家も多いので、機会があればシルクスクリーンとリトグラフの違いを見比べてみてもよいかもしれません。