人間国宝の蒔絵の保持者、室瀬和美とその作品について。
室瀬和美とその作品についてご紹介します。
伝統と現代性の融合
室瀬和美は2008年に蒔絵で人間国宝に認定された漆芸家です。伝統的な蒔絵の技法を使いながらも現代性の高い作品を作っており、日本はもちろん海外でも高い評価を得ており、ロンドン、パリ、バルセロナ、ミュンヘンなどの展示会に出品したり漆芸に関する講演を行ったりしています。
今回は、室瀬和美とその作品についてご紹介します。
室瀬和美の経歴
室瀬和美は1950年、漆芸家 室瀬春二の子として東京で生まれました。
父は輪島伝統の沈金彫技法を習得し、京都で蒔絵・螺鈿・鎌倉彫を学んだ後に独立、日本美術協会展、日展、日本伝統工芸展などでさまざまな賞を受賞する優れた漆芸家で、幼少の頃から漆芸に親しんでいました。
中学生のころから父の仕事を手伝うようになった室瀬和美は、1970年に東京藝術大学美術学部工芸科入学し、工芸家の道を本格的に歩み始めます。
入学後は1973年に東京藝術大学安宅賞受賞、1975年に第22回日本伝統工芸展に「 冬華文蒔絵飾箱」が初入選、1976年に東京藝術大学大学院美術研究科漆芸専攻を修了した際は修了制作を大学が買い上げるなど早期から高い評価を受けます。
日本伝統工芸展、伝統工芸新作展に作品を出品し、東京都教育委員会賞を受賞するなど、漆芸家として順調にスタート。1984年には東京池袋で初の個展を開催します。
また、自身の作品を政策・発表するだけではなく、1991年に目白漆芸文化財研究所を開設し、漆芸文化財保存に従事するなど漆芸の技術継承や失われた技術の復活といった分野でも活躍を始めます。
1993年には、世界の博物館が直面している課題と解決策を話し合うICOM国際会議にて講演を行うなど、その活動は海外にも広がりを見せ日本はもちろん海外での評価も高まってゆきます。
1996年に静岡県の三嶋大社が所蔵する国宝「梅蒔絵手箱」の模造制作、2000年には香川県の金刀比羅宮本殿拝殿の格天井「桜樹木地蒔絵」の制作など、文化財の修理や復元、模造制作も手掛けるなどの功績を残し、2008年に「蒔絵」で人間国宝に認定され、2021年には旭日小綬章を受章しました。
作品の特徴
室瀬和美の作品は文化財の研究や復元などの経験から得た時代を超えた普遍の美しさと、現代的なアート感覚が融合した格調高さと優雅さを備えています。
伝統的な研ぎ出し蒔絵や螺鈿などの技法で作られる作品は、壁面作品、箱、盤、茶器、装身具など大きなものから小さなものまで多岐にわたっており、その多くが自然や動植物をモチーフとしています。
華やかでありながらどこか落ち着きのある佇まい、伝統的でありながらモダンでユニークな印象があります。
まとめ
室瀬和美の作品は、文化庁、東京芸術大学、東京国立近代美術館工芸館、ベルリン日独会館などで見ることができます。機会があれば鑑賞してみてはいかがでしょうか。