画賛と墨跡の違いはなんですか?
画賛と墨跡の違いをご説明します。
掛け軸に使われる画賛と墨跡
床の間飾りや茶道などに使う掛け軸には、浮世絵や山水画、古筆などさまざま種類がありますが、文字が書かれた掛け軸は何を書いているか見当もつかない、どういった種類のものか判別できないなど、親しみがわきにくく難しいと感じる方も多いのではないでしょうか。
字が書かれた掛け軸としては、古筆、画賛、墨跡、消息、断簡などがありますが、今回は比較的よく見かける画賛と墨跡の違いについて紹介します。
画賛とは
画賛とは掛け軸のみならず、大和絵や水墨画、肖像画など、さまざまな画の余白部分に書き込まれる書です。元は文字通り「画に対する賛辞」のことでしたが、後に絵に合わせた漢詩、和歌、俳句などが書かれるようになりました。漢画のほか、鎌倉時代・室町時代の水墨画に多くみられます。
また、禅宗の画僧が描いた絵には、絵の内容に沿った仏の教えを説くための解説や注釈が書かれていることもあります。
肖像画であればその人物の事績などが書かれているなど、画賛の内容は多岐にわたります。
墨跡とは
墨跡は広い意味では禅僧が書いた文字のことですが、特に中国の宋・元の時代、日本の鎌倉時代から室町時代初期の頃に禅宗の高僧によって書かれたものをさします。前者と後者を区別するため、後者は「禅林墨跡」と呼ぶこともあります。
墨跡は、師が弟子に修行を収めたことを認める際に発行する「印可状」や、仏の教えを弟子に伝えるために書かれた「法語」、師が臨終の前に弟子に対して仏の教えを漢詩で残す「遺偈(ゆいげ)」など、禅宗の修行に関わる内容で、観賞用として書かれていないことが大きな特徴です。
千利休が「道具の第一を掛物である」とし、墨跡を筆頭に上げたことから茶道の掛物の中では最も格式が高いものとして扱われています。
画賛と墨跡の違い
画賛と墨跡の大きな違いは、画賛は書かれている内容は何であれ絵と一緒に描かれているのに対し、墨跡は文字のみが書かれていることです。
また、画賛は基本的に誰が書いたか、いつ書かれたかは限定されませんが、墨跡は禅宗の僧が書いたものに限定されており、なかでも「禅林墨跡」は鎌倉時代から室町時代初期の禅宗の高僧が書いたものと、非常に限定的です。
さらに、画賛は絵を引き立てるための詩など鑑賞されることを想定して書かれますが、墨跡は禅僧の修行のために書かれた実用の文書で、干渉を想定して書かれたものではないという違いもあります。
まとめ
墨跡は内容を読めないと他の書との区別が難しいかもしれませんが、画賛は絵と一緒に書かれていることから簡単に区別ができます。それぞれ異なる味わいがあるので、見かけたときはじっくり鑑賞してみてはいかがでしょうか。