鮮やかな緑の草花や中国風の絵柄(シノワズリ)が特徴のハンガリーのブランド食器、ヘレンド(Herend)とは?
ハンガリーの食器ブランド、ヘレンドをご紹介します。
王侯貴族御用達のヘレンド
ヨーロッパの食器ブランドというとドイツのマイセン、イギリスのウェッジウッド、フランスのセーブルなどがありますが、西洋と東洋の文化が交差するハンガリーのブランド「ヘレンド」は、ほかのブランドにはない独特な魅力で世界中の人気を集めています。
鮮やかな緑の草花や「シノワズリ」といわれる中国風の絵柄が特徴といわれるヘレンドにはどのような歴史があり、どのような特徴があるのでしょうか。
ヘレンドの歴史
ヘレンドは、現在のハンガリーの首都ブダペストから約150㎞程離れたヘレンド村で1826年に創業しました。
ヘレンド村はルネサンス期にイタリアで生まれた「マヨリカ焼」という錫釉陶器が盛んにつくられていた地域です。錫釉陶器は不透明で真っ白な表面を作る錫釉の上に絵付けを行うことで鮮やかに発色させる陶器であることから、この地には高い技術の絵付けを施せる職人が数多くいたことが推測されます。
当時のハンガリーはオーストリアの貴族ハプスブルグ家の統治下にあり、ヘレンドの食器はウィーンの宮廷に献上されたほか、多くのハンガリー貴族からも愛されました。多くの貴族たちの求めに応える作品を作るためにヘレンドは高い技術や芸術性を獲得し、1842年には「ヘレンド磁器製造所」として帝室・王室御用達に承認され、オーストリア皇帝フランツ・ヨゼフ1世の庇護を受けることになります。
1851年にイギリスで開催されたロンドン万博では、ハプスブルグ帝国から19の磁器製作所の作品が出品されましたが、当時無名でヘレンドだけがヴィクトリア女王の目に止まり金賞を受賞。また、ヴィクトリア女王がディナーセットを注文下のをきっかけに「ヴィクトリア」と呼ばれるシリーズが作られるようになります。
その後、ヘレンドは各地で開かれた万博に出品、1867年のパリ万博ではフランス皇帝ナポレオン3世の妻が「インドの華」シリーズのディナーセットを購入するなど、ヨーロッパ貴族の間で人気を獲得していきます。
19世紀は貴族の間で磁器がもてはやされた時代で、18世紀後半になると多くのブランドが大量生産を始めましたが、大量生産によって芸術性が損なわれたことで各国の名窯は次第に凋落を始めます。
一方、ヘレンドは機械に頼らない手工業生産方式を貫き通すことで伝統的な絵付けや形成の技術を保持し、最盛期を迎えます。
20世紀に入ると第一次世界大戦、第二次世界大戦の影響で輸出や原料調達が困難になるなど一時衰退したヘレンドですが、1948年に国有化され、再び独自の芸術性を取り戻していきます。
ヘレンドの特徴とシリーズ
ヘレンドの特徴はなんといってもオリエンタルな雰囲気がある独特な絵柄です。特に有名なのが蝶や牡丹をモチーフとした「シノワズリ」と呼ばれる中国風の絵柄で、そのほかにもヨーロッパの写実的な絵柄やペルシアの細密画のような絵柄の作品も存在します。
また、爽やかな色合いも大きな特徴で、アポニーシリーズなどに見られる鮮やかな緑色は「ヘレンドグリーン」とも呼ばれています。
【代表的なシリーズ】
- ウィーンのバラ
- ヴィクトリア
- インドの華
- アポニー
まとめ
現在もほとんどの工程を手作業で行っているヘレンドは、食器だけではなく置物、人形、インテリア小物など、さまざまな品を制作しています。いずれも人気が高いため、売却を検討しているヘレンドをお持ちの方は弊社にご相談ください。