日本の掛け軸とは何が違う?中国の掛け軸の特徴4つ。
中国の掛け軸の特徴を4つご紹介します。
中国掛け軸の歴史
日本の床の間飾りとして定着している掛け軸ですが、もともと掛け軸は「仏画」として中国で使用されていたものです。成立した時期ははっきりとしていませんが、一般的には西暦1000年の「北宋時代」に始まったといわれています。
ただし、日本に掛け軸文化が伝わったといわれているのは、西暦1000年より前の飛鳥時代のため、実際は西暦1000年よりも以前から存在していたのかもしれません。
中国の掛け軸には、独自に発展した日本の掛け軸とは異なる特徴があります。どのような点が異なるのでしょうか。
絵画に詩句がついている
中国には古くから「詩画一如」「書画同源」という考えがあります。これは、「書」と「絵画」は本来同じ根から生まれたものであり、ゆえに「詩」と「絵画」は切り離せないものであるという考えです。
そのため、中国の掛け軸は「絵画のみ」ということはなく、絵画に関する詩句が添えられているのが基本です。日本の掛け軸は「絵画のみ」「書のみ」ということが多いため、絵画と詩句が一緒に書かれているというのは中国掛け軸の大きな特徴といえるでしょう。
芸術的価値の高い落款
掛け軸の書画には制作日や作者名などを示す落款が捺されていることがほとんどですが、中国掛け軸の落款は芸術的価値が高いという特徴があります。
中国では秦の始皇帝時代から印象制度が整い、唐の時代ごろになると印象に美術的な価値が求められるようになりました。
中国で掛け軸が成立したといわれる北宋時代になると、印を作る「篆刻」が書や漢詩などに並ぶ「文人のたしなみ」とされるようになり、工芸美術として大きく発展します。
中国掛け軸に芸術的な落款が捺されているのは、落款が単なる「完成品の証明」や「作者のサイン」ではなく、文人としての教養・技術の高さを示す物であったからといえるでしょう。
文人表具
掛け軸の表装には様々な様式が存在しますが、大きく分けると日本で発展した「大和表具」と、中国流の「文人表具」の2通りがあります。
文人表具には袋仕立て(ふくろじたて)、唐表具(とうひょうぐ)、明朝(みんちょう)などがありますが、文人表具は一般的に「風帯」がついていません。
風帯とは、掛軸の上端から垂れ下がった二本の帯のことで、屋外で掛け軸を鑑賞するときに帯が風になびいて鳥が驚き、鳥が近づいて掛け軸を汚すのを防ぐ役割があるといわれています。
画風やモチーフ
仏画から始まった中国の掛け軸ですが、時代が経つにつれて動物画や美人画、花鳥画、山水画などが描かれるようになりました。日本でも同様のモチーフが用いられていますが、日本と中国では色彩や画風などにいくつか違いが認められます。
例えば、山水画は中国でも日本でも多く用いられたモチーフですが、中国の山水画は「山」を中心とた勇壮で鋭い印象で、季節感があまりないのが特徴です。
日本の山水画は中国の山水画に比べると柔らかくて情緒的な印象で、季節感が感じられます。また、日本の山水画は「にじみ」や「ぼかし」の技法が多く使われるのに対し、中国の山水画は輪郭線がくっきりとしているといった違いがあります。このような技法の違いは、山水画の掛け軸を見分けるポイントといえるでしょう。
まとめ
中国の掛け軸は骨董的に高い価値がつくものが多い反面、贋作が多いのも一つの特徴です。そのため、購入はもちろん、売却の際も知識と経験を持つ業者を選ぶ必要があります。