どちらもお湯を沸かす道具だけど…鉄瓶と茶釜の違いは何ですか?
鉄瓶と茶釜の違いをご紹介します。
どちらも「お湯を沸かす道具」
茶道で使う鉄瓶と茶釜は、どちらもお茶を作るためのお湯を沸かす道具ですが、形や使い方、歴史には微妙な違いがあります。
形と使い方の違い
鉄瓶は胴の部分に注ぎ口と持ち手が付いており、一言でいうと「小型のヤカン」のような形をしています。
注ぎ口がついているため、道具を使わずお湯をそのまま注ぐことができますが、サイズが小さいため使うのは小規模な茶席に限定されるようです。
一方、茶釜には注ぎ口や持ち手がついておらず、胴と蓋だけというシンプルな構成になっています。
鉄瓶のようにお湯を直接注ぐということはできませんので、お湯を使うときは柄杓を使用します。鉄瓶よりも大きく、沸かせるお湯の量も多いため、大規模な茶会で使用されます。
また、茶釜のなかには鉄瓶のような持ち手がついた「釣釜」という茶釜もあります。
持ち手はついていますが注ぎ口はついていないため、鉄瓶とは容易に見分けることができます。
また、炉の上に直接かけるのではなく天井から鎖でぶら下げて使用するといった独特な使い方をするのも特徴的です。流派によって多少違いがあるようですが、春先のみ使用されます。
釜と鉄瓶の歴史
古代中国の「鼎(かなえ)」が起源といわれている釜の歴史は古く、唐代にはすでにその原型が作られていたのではないかといわれています。
日本の釜がどのように発展したのかははっきりとしていませんが、日本に「茶の湯」が伝来した鎌倉時代には、すでに国産の茶釜が使用されていたようですので、茶を飲む風習が広まる以前から釜の原型が日本に存在していたのかもしれません。
また、鎌倉時代の臨済宗の僧侶、南浦紹明(なんぽしょうみょう)が、茶道具を置く棚である「台子」と共に「鬼面の風炉釜」と呼ばれる茶釜を持ち帰ったという伝説が残っていますが、応仁の乱で消失してしまったといわれているため、真偽は定かではありません。
いずれにせよ、鎌倉時代頃にはすでに茶釜が存在していたといえそうです。
一方、鉄瓶の歴史は茶釜に比べると浅く、千利休が活躍した戦国時代や、鉄瓶の生産が確立した江戸中期などの説があります。
鉄瓶と似た形状をしたお湯を沸かす道具といえば「ヤカン」がありますが、日本に伝来した鎌倉時代のヤカンはお湯を沸かす道具ではなく、漢方薬を煮だす用途に使われていたため、茶道具として使用されてはいませんでした。
そのため、鉄瓶はヤカンが変化したものではなく、茶釜が発展して生まれたものだと考えられています。
まとめ
茶釜と鉄瓶はどちらも「お湯を沸かす茶道具」ですが、茶席では、どっしりとして格調高く、茶道具としての歴史も長い茶釜の方がよく使われるようです。
基本的に、茶席以外で使用されることがないため、現代人にとってはやや親しみのない道具といえるでしょう。
一方、茶道具として発展しながらも、現在は「小型のヤカン」として使われることが多くなった鉄瓶は、茶道に触れたことがない人にも親しみやすく、フランスを中心とした海外でも高い人気を集めています。