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版画の4つの種類について。凸版、凹版、平版、孔版。

版画の凸版、凹版、平版、孔版について説明します。

「版画」の誕生

絵画や掛け軸などの美術品は、大きく分けて「手描き」と「版画」の2種類があります。

ペンや絵筆などを使い、紙やキャンバス、木や石でできた板に直接絵を描く手描きは、人間が絵や文字を書くようになった瞬間に誕生したものだと思われます。

道具と場所さえあれば描くことができる手描きは、誰でも簡単に絵や文章を残すことができるというメリットがありますが、同じ絵や文書を複数作るのに時間がかかるという欠点がありました。

そこで生まれたのが、「版」にインクを乗せ、紙を擦りつけてインクを写す「印刷」です。

印刷の起源は7~8世紀ごろの東アジアで、木の板で版を作る「木版印刷」が最初だといわれています。

日本では764年から770年にかけて印刷された「百万塔陀羅尼(ひゃくまんとうだらに)」が年代が判明している印刷物の中で最古です。

印刷技術は時代と共に進化し、さまざまな種類の版が作られるようになると同時に、素材も木、陶器、金属などに広がりました。

14世紀から15世紀ごろ、銅板を化学薬品で加工する「エッチング技法」がヨーロッパで広がったことで「銅版印刷」の技術が誕生。繊細な表現が可能になったことから、文字を写す「印刷」から、絵を写す「版画」が始まりました。

 

凸版

描画したい部分を残して版を彫って作る凸版を使った版画は、日本でもっともメジャーな方法といわれています。

小学校で木版画や消しゴムハンコ、芋判を作ったことがあるという人は多いと思いますが、どれもすべて「色を付けたくない部分を彫る」凸版の一種です。

色ごとに作られた複数の木版を刷り重ねることで色彩豊かな絵を作る「浮世絵」は、凸版版画の代表といえる存在ではないでしょうか。

 

凹版

凸版とは逆に、描画したい部分を彫って版を作るのが凹版です。

インクを付けてそのまま刷る凸版とは違い、凹版は凸部についたインクをふき取るという手間がかかりますが、凸版に比べて細い線を描画できるため、より繊細な表現が可能という特徴があります。

日本の浮世絵は木を使った凸版が用いられていたのに対し、西洋絵画では銅版を用いた凹版が主流で、彫刻刀のような「ビュラン」という道具を使って版を作る「エングレービング」、硬い針のような道具で版に線描する「ドライポイント」、ニードルと酸を使って版を作る「エッチング」などがあります。

 

平版

版を彫って加工する凸版・凹版とは異なり、平らな版にインクを載せて刷る方法が平版です。

平版を使用する版画は、もともと石板を使っていたことから、「石」を意味するギリシャ語由来の「リトグラフ」と呼ばれています。

リトグラフの歴史は凸版・凹版に比べると浅く、18世紀末にドイツ出身のアロイス・ゼネフェルダーが偶然原理を発見したことから始まりました。

リトグラフの製版方法は、平らな版面の上に油性分を含んだ材料で描画したのち、版全体に薬品を塗り、描画部分に親油性、描画されていない部分に親水性という性質を持たせるという方法で、非常に複雑かつ時間がかかります。

しかし、リトグラフは描画したものがそのまま版になるという特徴があるため、クレヨンの独特的な風合い、線の強弱、筆による滲み、とばしたインクなど、凸版・凹版ではできなかった表現をすることが可能です。

19世紀にヨーロッパを中心に広がり、ロートレック、ムンク、ミュシャ、エッシャー、ピカソなど、さまざまな画家がリトグラフを利用して作品を作っています。

なお、石版が用いられてきたリトグラフですが、近年は石ではなくアルミ版が多く用いられています。

 

孔版

孔版は文字通り「版に孔を彫る」製版方法です。

凸版・凹版・平版は版にインクを載せた上に紙を重ね、ローラーなどで圧をかけて写すという方法ですが、孔版では紙の上に版を重ね、版の裏側に塗ったインクをローラーなどで押し出して紙に写すという仕組みになります。

凸版・凹版・平版は版に描画した図画と紙に写した図画は左右が反転した状態になりますが、孔版は左右が反転しません。

また、版の上に複数のインクを混ぜ合わせて載せ、スクイージーという道具を使ってインクを押し出すことでグラデーションを作ることができるのも大きな特徴です。

絹を貼った木枠を使用する「シルクスクリーン」やトレーシングペーパーなどを切り抜いて版を作る「ステンシル」などは孔版になります。

まとめ

一言で「版画」といっても、製版方法や版の素材によって完成する作品の味わいは大きく異なります。

美術館などでは作品名や作家名、制作年代だけではなく「リトグラフ」「シルクスクリーン」「エッチング」といった制作の種類も表記されていますので、製版方法の違いによるそれぞれの特徴を、ぜひ見比べてください。

 

 

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