茶道で聞く、千家十職とは何ですか?
茶道の千家十職について説明します。
千家御用達の職人たち
現在「三千家」と呼ばれている茶道の流派、表千家・裏千家・武者小路千家では、茶を点てるときに「利休好み」の茶道具を使用します。
茶道具には茶碗、湯釜、茶杓などさまざまな道具が用いられ、茶道具を作る職人も数多く存在していますが、「利休好み」の茶道具を作ることができる技術を持った職人は限られていました。
そこで、表千家三代目である千宗旦(せんのそうたん)は、利休の茶風を守るために「利休好み」の茶道具を作る職人を指導するようになり、千家と茶道具職人たちは深いかかわりを持つようになりました。
利休好みの茶道具を作る職人の家系(職家)は、宗旦が指導を始めた当初は十家ではありませんでしたが、現在は十職の家柄が指定されており「千家十職」と呼ばれるようになりました。
「利休好み」を守る十職
「職家」と呼ばれる家々では、茶事や茶の稽古に必要な道具を各家が分担して調製して家元や茶人の求めに応じた茶道具を製作するほか、茶道具の基準を守るため、各家が利休好みの色や形を伝承しています。
十職に指定されている職家
一. 茶碗師:楽吉左衛門・・・楽茶碗
ろくろを使用せず手とヘラだけで成形する楽焼きは、手ごねによるわずかな歪みと厚みのある形状が利休に好まれました。
二. 釜師(かまし):大西清右衛門・・・釜、鉄瓶
室町時代後期から400年以上続く大西家は、京都市中京区の三条釜座(かまんざ)に工房を構える京釜師の家です。
三. 塗師(ぬし):中村宗哲・・・棗、香合などの漆塗り
400年近く続く塗師の家である中村家は、蒔絵を施した家具などの製作も行っていましたが、明治以降は茶道具の塗師専業となっています。
四. 指物師(さしものし):駒沢利斎・・・茶箱、棚物
釘などを使わず木と木を組み合わせて作った家具や調度品をさす「指物」を製作する駒沢家は、現在空席となっています。
五. 金物師(かなものし):中川浄益・・・建水(けんすい)、水注やかん、火箸など
茶碗を清めたり温めたりするときに使った湯や水を捨てる建水など、さまざまな金工品を作る中川家は、錺師(かざりし)とも言われ、金工の精巧な茶道具を得意としています。
六. 袋師(ふくろし):土田友湖・・・帛紗(ふくさ)、仕服
茶入を包む仕服、茶入、棗、茶杓などを拭う帛紗などを製作する土田家は、元は西陣織の仲介人でしたが、袋師であり茶人でもある亀岡宗理の弟子となってその家業を継いだことから始まりました。
七. 表具師(ひょうぐし):奥村吉兵衛・・・掛軸、風炉先屏風
家元揮毫の書などを掛け軸や風呂先屏風に仕立てる奥村家は、釜の敷物の一種である紙釜敷なども製作しています。
八. 一閑張細工師(いっかんばりさいくし):飛来一閑・・・棗、香合
竹や木で組んだ骨組みに和紙を何度も張り重ねて形を作り、柿渋や漆を塗って作る「一閑張」は、明から日本に亡命した飛来家の末裔、一閑が伝え広めたといわれています。
九. 竹細工、柄杓師(たけざいく、ひしゃくし):黒田正玄・・・茶杓
歴代三千家・将軍の御用達柄杓師である黒田家は、茶杓のほか台子、香合、花入など、竹製の茶道具を製作しています。
十. 土風炉、焼物師(どぶろ、やきものし):西村(永楽)善五郎・・・茶碗、土風炉
京焼の家元の一つである善五郎は、代々土風炉(どぶろ)、茶碗などを製作してきました。
初代から9代は西村姓を名乗り、10代以降は永樂(えいらく)姓を名乗っています。
まとめ
昔ながらの技法や伝統を踏まえながら茶道具を作り続けている「千家十職」ですが、ひたすら伝統を守るだけではなく、時代の変遷に合わせて緩やかに変化しています。
異なる時代の作品をじっくり見比べると、それぞれの時代の色や、芸術作家としての側面を持つ職人の個性や創造性を垣間見ることができるかもしれません。