アンティークのお人形でよく聞く、ビスクドールとは何ですか?
アンティークドールで人気のビスクドールについてご紹介します。
フランス生まれのビスクドール
人形の歴史は古く、ヨーロッパではギリシャ・ローマ時代から始まったとされています。
人形は当初、人間や動物の「生贄」のかわりに祭壇に捧げられるなど、宗教的、呪術的な用途に用いられていましたが、時代が経つにつれて呪術的な意味が薄れ、子どもの遊び道具や装飾品という役割だけが残るようになりました。
14世紀後半~15世紀に入ると、フランスでは洋服を着せられる等身大の「ファッションドール」が登場し、ヨーロッパ各地の宮廷婦人に愛されるようになり、18世紀には「洋服の着こなしや裁縫教育に役立つ子ども用おもちゃ」として小さなサイズのファッションドールが人気を集めます。
この頃のファッションドールは、現在「ビスクドール」と親しまれている子ども型の人形ではなく、大人型の「レディドール」でしたが、1855年に開催されたパリ万博に出展された日本の市松人形に影響を受け、現在親しまれている子ども型の「ベベドール」が誕生しました。
ビスクドールの特徴
ビスクドールの「ビスク」とは、お菓子のビスケット同様、フランス語の「ビスキュイ(二度焼き)」が語源で、その名のとおり人形の頭部や手足のパーツ、ときには全身が二度焼きされた素焼きの磁器で出来ています。
素焼きの陶磁器で出来た肌は滑らかで透明感があるだけではなく、二度焼きによってバラ色に色づいた質感が、まるで人間の肌のように見えることが大きな魅力です。
頭と胸が一体になっているタイプ、ガラス製の目がはめ込まれたタイプ、瞼が閉じるタイプ、体がヤギの革で出来たタイプなど、子どもの遊び道具として実用できるよう、体が自由に動かせる実用性の高いビスクドールが開発されました。
「プレスドビスク」と「ポアードビスク」
ビスクドールには大きく分けて「プレスドビスク」と「ポアードビスク」の2種類に分けることができます。
1890年以前、ビスクドールは陶土を型に押し込んで成形するプレスドビスクの製法で作られていましたが、プレスドビスクは均一な質の磁器を作ることが難しい、大量生産ができないといった問題がありました。
そこで誕生したのが、液状のポーセリンを型に流し込んで作るポアードビスクです。
安定した品質で大量生産できるポアードビスクが台頭したことで、従来のプレスドビスクは次第に廃れ、現在作られるビスクドールもポアードビスクで作られています。
まとめ
19世紀から20世紀初めには「ジュモー」「ブリュ」といったフランスを代表する工房が登場するなど、隆盛を極めたビスクドールですが、安価なセルロイドやビニール製の人形が普及するにつれて姿を消しました。
ビスクドールの黄金時代はおよそ50年と短いものでしたが、その間に作られた職人の技術の粋が込められたさまざまなビスクドールは、美術性、希少性、骨董的価値から、現在でも多くのコレクターを虜にしています。