浮世絵とはどのようなものですか?
浮世絵についてご説明します。
ジャポニズムの代表である浮世絵
19世紀末、フランスを中心としたヨーロッパで、日本の絵画や工芸品、演芸、着物などが「ジャポニズム」として人気を呼び、中でも浮世絵は、ゴッホ、セザンヌ、モネ、ゴーギャンなど、多くの芸術家に影響を与えました。
また、浮世絵の色彩構成や、線で構成された平面的な表現は、アール・ヌーヴォーにも影響を与えており、浮世絵は、西洋芸術にもっとも取り入れられたジャポニズムといえます。
浮世絵の題材
浮世絵の「浮世」という言葉は、元々は仏教用語で「つらく悲しい世の中」という意味だった「憂き世」が、江戸時代になってから「(時の流れに)浮いている世の中=現在の人間世界」という意味の「浮世」に変化したものだといわれています。
そのため、浮世絵では当時の日常風景や、当時はやっていた演劇、役者、当時流行したファッションを身にまとった女性など、描かれた当時の時代背景を感じさせる題材が多く描かれているほか、歴史上の人物や名所の風景も好んで描かれています。
浮世絵の種類
浮世絵は、木版画で浮世絵が大量生産できるようになる以前や、木版画の浮世絵が主流となった以降も、絵師が自ら紙や絵絹に描いた作品である「肉筆浮世絵」と、木版画で刷られた「錦絵」に分けることができます。
また錦絵は、絵師が下絵を描き、彫師が下絵を元に版を掘り、摺師が版を摺るという分業制で、一般的には200枚程度が「初摺り」として販売され、人気が出て需要が高まると、追加で「後摺り」が発行されるのですが、初摺りの作品では墨版と色版の両方が摺られた状態の「交合摺り」を絵師がチェックするのに対し、後摺りでは絵師のチェックが行われないため、色合いが初摺りとは異なる、ぼかしなどが省かれるといったことがあるほか、版自体の摩耗による線や色の劣化もあるため、同じ柄師による浮世絵であっても、初摺りと後摺りは区別されます。
浮世絵の価値
浮世絵の中で最も価値が高いのは、何といっても絵師自らが直接描いた「肉筆浮世絵」です。
次に価値があるのは、木版画で作られる錦絵の中でも、絵師による監修が行われる「初摺り」の作品で、版の摩耗が少ない1枚目がもっとも価値が高いといえます。
絵師が監修を行っておらず、版の摩耗で色や線のシャープさが失われた「後摺り」の作品は、初摺りの作品よりも価値が下がります。
まとめ
浮世絵は、絵画であるとともに、現在で言う雑誌のような役割を持った大衆娯楽でもあり、独特の色使いや構図の美しさだけではなく、当時の流行や時代背景を感じさせる、歴史資料的な楽しみ方ができる美術品です。
ときには、現実の忙しさを忘れ、古き日本の空気を感じながら浮世絵を鑑賞するのもよいかもしれません。