和楽器の横笛にはどんな種類がありますか?
和楽器の横笛とは?種類や特徴、雅楽・能楽・祭りで使われる笛の違いを解説します。
和楽器の中で「横笛」は、息を吹き込んで音を出す「吹きもの」と呼ばれる管楽器の一種で、気鳴楽器に分類されます。笛という言葉は「吹く枝」「吹く柄」から派生したもので、昔から人々の生活や儀式に欠かせない道具の一つとして使われてきました。横笛は「たて笛」とは異なり、横に構えて吹く形状を持ち、雅楽や能楽、祭りの囃子などさまざまな場面で演奏されています。
この記事では、横笛の種類や特徴について詳しく解説します。和楽器としての横笛には、雅楽や能楽、祭りで使われるさまざまな種類があります。それぞれの笛がどのように使われ、どんな特徴を持っているのかを知ることで、和楽器の魅力がより一層深まるでしょう。
和楽器の横笛の種類
横笛は大きく分けると以下のような3つのジャンルに分類されます:
- 雅楽で使われる横笛(竜笛、高麗笛、神楽笛など)
- 能楽で使われる横笛(能管)
- 篠笛をはじめとする祭りや民謡などで使われる横笛
1. 雅楽で使われる横笛
雅楽は日本の伝統音楽で、主に宮中の儀式や寺社での儀式などで演奏されます。その中で、横笛は重要な役割を担っており、以下のような種類があります。
竜笛(龍笛)
竜笛(りゅうてき)は、雅楽で最もよく使われる横笛で、特に唐楽や催馬楽、朗詠といった雅楽の種目で演奏されます。竹製の笛で、全長は約40cm、7つの指穴があり、指穴以外の部分には「樺巻」という桜の樹皮が巻かれています。竜笛は、雅楽の中で主旋律を担当することが多く、音色は明るく澄んだ響きが特徴です。
高麗笛
高麗笛(こまぶえ)は、雅楽の高麗楽で使用される横笛です。竜笛に似ていますが、より細く短く、6つの指穴を持ちます。高音が出やすく、清涼感のある音色が特徴です。全長は約36.5cmで、主に高麗楽のほか、東遊びという雅楽の種目でも使われます。
神楽笛
神楽笛(かぐらぶえ)は、神楽歌を伴う雅楽で使われる横笛で、全長約45.5cmと長めです。6つの指穴があり、音色は竜笛よりも低く、落ち着いた響きが特徴です。神楽歌や雅楽での神事の際に演奏され、大和笛や太笛とも呼ばれることがあります。
2. 能楽で使われる横笛
能楽で使われる横笛として代表的なのが能管(のうかん)です。能管は、能の舞台で使用されるほか、歌舞伎や寄席囃子などでも使われる重要な楽器です。
能管
能管は、竹で作られたエアリード(リードのない)楽器で、7つの指穴を持ちます。竜笛とほぼ同じ長さの約39cmですが、能管の大きな特徴として「のど」と呼ばれる管の中の部分が挿し込まれており、管内の径が狭くなっています。この「のど」の構造により、独特の高音「ヒシギ」を出すことが可能です。能管は、能や歌舞伎の場面で、緊迫感や情緒を高めるために使われ、音程よりも音色が重視される楽器です。
3. 祭りや民謡で使われる横笛
祭りや民謡の場面で使われる横笛として最も一般的なのが篠笛(しのぶえ)です。篠笛は、三味線や太鼓と組み合わせて演奏されることが多く、祭りの囃子や民謡の伴奏に欠かせない楽器です。
篠笛
篠笛は、篠竹(女竹)を素材としたシンプルな竹製の笛で、長さや穴の数にバリエーションがあります。6つまたは7つの指穴を持ち、調律の異なる笛が複数存在するため、演奏する楽曲や合奏する楽器に合わせてさまざまな調子の篠笛が用いられます。篠笛には「○本」と呼ばれる調子があり、1本調子から12本調子まであり、半音刻みで調整されています。最もよく使われるのが8本調子で、ピアノの白鍵に相当する音階を出すことができます。
篠笛はそのシンプルさから、伝統的な祭りや郷土芸能で広く使われるだけでなく、現代音楽やポップスなどでもその音色が生かされています。
横笛の演奏と特徴
横笛の演奏には、息のコントロールや指使いが重要で、各笛ごとに音色や音程、表現方法が異なります。例えば、篠笛は軽やかで明るい音色を持ち、音階にあわせた演奏が可能であるのに対し、能管は音程よりも音色を重視し、独特の緊張感を持った音を出します。
横笛の構造や材質によっても音色が大きく変わり、竹の質や加工方法、巻かれる樹皮や装飾がその音質に影響を与えます。また、長さや指穴の数も演奏できる音階や音色に大きく関わっています。
各横笛の用途と場面
横笛は、演奏する場面や音楽の種類によって使い分けられます。
- 雅楽の場面では、竜笛や高麗笛、神楽笛が使われます。これらの笛は、主に宮中儀式や神社での神楽に伴って演奏されます。
- 能楽や歌舞伎では、能管が使われ、劇の緊張感を高める役割を果たします。
- 篠笛は、祭りのお囃子や民謡、さらには現代音楽まで幅広いジャンルで使われ、その音色は三味線や太鼓と相性が良いとされています。
横笛の歴史と文化的背景
横笛は、日本の歴史や文化に深く根付いています。雅楽や能楽といった伝統芸能に欠かせない楽器として、長い歴史を持ち、時代を超えて多くの場面で演奏されています。また、祭りの囃子としての篠笛は、地域の伝統文化や郷土芸能と密接に結びついており、今でも多くの場所で親しまれています。
横笛の製作には、竹の素材や加工技術が重要で、職人の技術がその音色や品質に大きく影響を与えます。笛の内部や表面の仕上げによって音が変わるため、製作には非常に繊細な技術が求められます。
まとめ
和楽器の横笛には、雅楽、能楽、祭りなどさまざまな場面で使われる種類があります。竜笛や高麗笛、能管、篠笛といった横笛は、それぞれ異なる音色や特徴を持ち、独自の魅力を発揮します。横笛の音色は、日本の伝統的な音楽や文化を象徴するものであり、その歴史的な背景や演奏の技術に触れることで、和楽器の奥深さを感じることができるでしょう。
横笛に興味がある方は、ぜひそれぞれの笛の違いや音色を聞き比べて、自分に合った笛を見つけてみてください。