江戸時代から伝わる「小石原焼」の技法保持者である人間国宝「福島善三」とその作品の特徴について。
福島善三とその作品の特徴についてご紹介します。
小石原焼と福島善三
小石原焼は、1662年(江戸時代前期)に、福岡藩の3代藩主 黒田光之が伊万里から陶工を招いて窯場を開いたことによって作られ始めた陶器で、現在も福岡県朝倉郡東峰村で焼かれています。東峰村では1600年ごろから高取焼という陶器が作られており、小石原焼は高取焼との交流により発展したといわれています。
小石原焼の分流といわれる小鹿田焼(おんたやき)が民芸運動の中で脚光を浴びたことから注目が集まり「用の美」の器として愛されてきた小石原焼ですが、小石原焼の窯元「福島本窯(ちがいわ窯)」の16代である福島善三が2017年に人間国宝に認知され、再び注目が高まっています。
今回は、福島善三とその作品についてご紹介します。
福島善三の経歴
福島善三は、1959年に福岡県小石原村(現在の東峰村大字小石原)に生まれました。生家は江戸時代から続く小石原焼の窯元でしたが、陶芸にはあまり興味を持たず大学卒業まではごく一般的な進路を歩みます。
しかし、日本各地の窯元を訪ねて作陶を見学するという機会を得て、小石原の陶芸技法の方が優れていると感じたことをきっかけに陶芸の道に進むことを決意。大学卒業後は家業を継いで作陶に没頭し始めます。
小石原焼は元々一子相伝であったため、福島善三が幼少の頃は窯元も数件程度しかありませんでしたが、昭和30年代後半に民芸陶器のブームが起こった影響から一子相伝の伝統がなくなり、家業を継いだころには40件近くの窯が開かれていました。
このことから「他の窯と同じものを作るのではなく、小石原産の材料を使って新しいものを作ろう」と決意。300年以上続く伝統を守りながらも新しい技法を生み出すだけではなく、これまで「秘伝」とされてきた技術を科学的に解明し、より確かな技術とできるよう研究を重ねます。
1999年に日本陶芸展大賞桂宮賜杯受賞を皮きりに、2001年に福岡県文化賞、2003年に西日本陶芸美術展大賞と日本伝統工芸展日本工芸会総裁賞など華々しい功績をあげ、2014には紫綬褒章を受章。2017年に59歳という若さで「小石原焼」の重要無形文化財保持者 (人間国宝)に認定されました。
作品の特徴
福島善三の作品は、シンプルな形の器にカンナや刷毛で文様を入れる小石原焼の技法を守りながらも、釉薬や原料に小石原産の長石や鉄鉱石、藁灰を使うなど独自の材料や釉薬を使用していることが特徴です。
伝統的な小石原焼らしい陶器のぬくもりが感じられる素朴なぐい吞みから、薄く青みがかった白い器にブルーの文様が美しく気品に満ちた鉢、素朴さと気品の両方を備えた深みのある赤い香炉など、作品によって印象が異なりますが、いずれの作品もすっきりとした形と洗練された美しさが印象的です。
まとめ
福島善三は現在も活躍している作家ですが、制作数が非常に少ないため作品の入手が難しい作家として知られています。
買取に出すと高値がつく可能性が高いので、お手元に売却を検討している福島善三の作品をお持ちの方は、一度弊社にご相談ください。