茶道のお稽古の際に使う茶杓の月別「銘(めい)」について。
茶杓の「銘(めい)」をについてご紹介します。
奥が深い茶杓の世界
茶道では、茶席を開く時期や格式、亭主の趣向などに合わせてさまざまな素材や形の道具を使い分けます。掛け軸や花といった装飾的な品物はもちろん、お茶をすくう茶杓にもさまざまな種類があります。
茶杓の格式は節の有無や位置、素材などで決まりますが、茶杓の季節は茶杓を入れる筒などにかかれた「銘」によって決まります。
銘には無季のものと季節のものがある
茶道では自然との調和を感じるためにその季節に合わせた道具を使用し、茶杓もその季節や月に合わせた銘のものを選んで使います。
季節によって使い分ける茶杓は、俳句などで使用する「季語」や、その季節を思わせる言葉が銘になっています。さまざまな銘があるため覚えるのが難しく、一見すると季節に関係がなさそうに思える銘もあるので注意が必要です。
また、禅語や和歌を銘とした茶杓は季節に関係なく使用できます。「好日」や「無一物」「和敬」は平常時に、「瑞雲」や「八千代」は慶事に使うなど、シーンに応じて使い分けられます。
月別の銘
月別の銘は俳句で使われる季語のほかに、その月の異名や年中行事に関する言葉が銘に使われることがあります。数が非常に多く、現在ではほとんど耳にしない言葉も多いため、個人ですべてを覚えるのはかなり難しいでしょう。
ここでは、各月の銘をいくつか紹介しますが、紹介しきれない銘もたくさんありますので、銘の季節がわからない時は季語辞典などで調べるとよいかもしれません。
【春】
・二月:鶯、梅一輪、 春霞、淡雪、薄氷、玉椿、残雪、早春、春寒、春雪、風花
・三月:若草、春風、麗か、風一陣、朧夜、長閑、朧月、早蕨
・四月:花吹雪、山桜、菜の花、花霞、落とし角、花影、雲雀、帰雁、羽衣
【夏】
・五月:菖蒲、清風、青雲、杜鵑、五月雨、薫風、緑風、緑水、青苔、杜若
・六月:蛍、緑苔、清流、早瀬、布引、漁火、石清水、水無月、鮎狩、白糸
・七月:涼風、白雲、村雨、星合、緑陰、荷葉、宵山、風鈴、花扇、夕凪
【秋】
・八月:清涼、鬼灯、山萩、萩の露、送り火、桐一葉、面影、蜩、秋風、秋草
・九月:望月、待宵、十六夜、名月、有明、斬月、白菊、野分、鈴虫、不知火
・十月:山路、残菊、八重菊、山里、山家、松虫、村雲、初紅葉、二季鳥、雁渡し
【冬】
・十一月:寒山、錦秋、木枯らし、初霜、蔦紅葉、紅葉狩り、敷松葉、落葉
・十二月:埋火、初氷、枯野、散紅葉、寒燈、浜千鳥、臘八、細雪、六花
・一月:若水、発芽墨、蓬莱、常盤、春駒、初音、末広、東雲、福寿草
銘の中には、月に関わらず季節を通して使われる銘、隣り合った月であれば季節にが異なっていても共通して使われる銘などがあります。
また、桜の名所であるとともに紅葉の名所として知られる「嵐山」は春と秋の両方に使用できるなど、複数の月や季節に対応している銘もあります。
まとめ
茶杓の銘は、花や掛け軸と同様に茶席の趣向を表す要素の一つです。一年中使用できる無季の茶杓があれば困ることはないかもしれませんが、季節を感じられる銘入りの茶杓があると、茶道をより奥深く楽しむことができるかもしれません。