青の画家、東山ブルーで代表される、東山魁夷とその作品について。
東山魁夷とその作品についてご紹介します。
昭和を代表する日本画家 東山魁夷
東山魁夷(ひがしやまかいい)は主に昭和時代に活躍した日本画家で、風景画を数多く手掛けたことで有名な作家です。現在でも非常に人気が高いことから、回顧展などが頻繁に催されています。
多作であったため、一度は作品を目にしたことがあるという人も多い作家ですが、どのような人物であったかは意外と知られていないようです。東山魁夷とはどのような人で、どのような作品を残したのでしょうか。
東山魁夷の生涯
東山魁夷は1908年に横浜の船具商の家に生まれました。3歳の頃に横浜から神戸に移り住み、青年期までを神戸で過ごしています。
旧制中学在学中に画家を志すようになり、卒業後は東京美術学校の日本画科へ進学。当時、同校で教鞭をとっていた結城素明の師事を受けるうちにその才能を開花させ始めました。1933年にはドイツに留学し、西洋画の技法を学んでいます。
第二次世界大戦が始まったことで創作の一時中断を余儀なくされましたが、終戦後に活動を再開。戦争によって母と弟を亡くし、失意の底にあった東山魁夷は制作に没頭します。
1946年に開かれた第一回日展では落選してしまいますが、1947年の第三回日展に出品した作品「残照」が特選を受賞。39歳で画壇に迎えられることとなりました。
その後、風景を題材に独自の表現を追求しながら精力的に活動にいそしみ、1960年には東宮御所の障壁画を担当、1970年代には奈良「唐招提寺御影堂」の障壁画を手がけるなど、数々の功績を残しています。
1990年に90歳でこの世を去るまで制作を続けてきた東山魁夷は、非常に多作だったため、さまざまな美術館でその作品を目にすることができます。
作品の特徴と代表作
東山魁夷の作品の特徴は、透明感のある色彩と、穏やかさの中に厳しさを感じさせる独特な佇まいです。
青や緑を使った作品が多いことから「青の画家」「東山ブルー」と呼ばれることもある東山魁夷の作品は、色遣いだけを見ると西洋画のような印象を受けますが、作品全体が持つ水墨画のような静謐さと神々しさから、紛れもなく日本画であると感じられるのではないでしょうか。
【代表作】
・「残照」(東京国立近代美術館)
・「道」(東京国立近代美術館)
・「光昏」(日本芸術院)
・「青響」(東京国立近代美術館)
・「白夜」(北澤美術館)
・「曙」(北澤美術館)
・「年暮る」(山種美術館)
・「白馬の森」(長野県信濃美術館・東山魁夷館)
・「濤声」「山雲」「黄山暁雲」(唐招提寺)
・「朝明けの潮」(皇居新宮殿)
まとめ
シンプルな構図と平明な色使いでありながら、奥深い精神性を感じさせる東山魁夷の作品は、東京国立近代美術館や長野県信濃美術館のほか、岐阜県中津川市の「東山魁夷 心の旅路館」、香川県坂出市の「香川県立東山魁夷せとうち美術館」、千葉県市川市の「東山魁夷記念館」でも観ることができます。
画集なども多く出版されていますので、ぜひ一度鑑賞してみてはいかがでしょうか。