香道の二大流派、「御家流」と「志野流」の違いは何ですか?
香道の二大流派、「御家流」と「志野流」の違いをご紹介します。
室町時代から始まった「香道」
香道はお茶を扱う「茶道」、花を扱う「華道」同様、香を扱うことで精神的な落ち着きを求める芸道です。
香を焚いて楽しむという文化は室町時代以前から存在していましたが、「芸道」として成立したのは室町時代で、三條西実隆(さんじょうにし さねたか)と志野宗信(しの そうしん)によって基礎が確立されました。
御家流と志野流の違い
現在、香道の二大流派である御家流と志野流は、香道成立当初にできた流派が二つに分かれてできたものです。
「御家流」は三條西実隆を始祖としており、平安時代、公家の間で行われてきた和歌と香遊びから優美さや心の余裕、遊び心を得ることを目的としています。
「香の香りと雰囲気を楽しむこと」が基本で、「貴族・公家の流派」といわれています。
一方、「志野流」は志野宗信を始祖とした流派で、形の完成を通して心の鍛練を図ることを目的とする「精神修養」として香を取り扱う流派です。
簡素な中にある厳しさや格式を重んじるスタイルが特徴で、「武家の流派」といわれています。
道具や香りの表現にも違いがある
風雅な雰囲気を楽しむ御家流と精神修養のために香を使う志野流は、源流は同じでも求める物に違いがあるため道具にも違いがあります。
例えば、香を焚いて香りを聞くときに使う「門香炉」は、御家流では青磁や染付のほか、蒔絵が施された漆塗りの香炉や金襴手、白磁の香炉などを用いますが、志野流では素朴な温かみと優しい色合いの「志野焼」の香炉を使用します。
このほか、香を焚くときに使用する「香筋(きょうじ)」「香さじ」などの道具の形状や、使用する道具の種類も流派によって異なります。
また、香りの表現(「味」という)をするときも、御家流では「甘」とされる「羅國」が志野流では「辛」とされるなどの違いがあります。
まとめ
香木は成長するのに長い時間がかかるため、毎年収穫できる「茶」や、季節ごとに新しい物を手に入れられる「花」に比べると入手が難しく、「今あるものを取りつくしてしまったらおしまい」という面があります。
そのため、華道は茶道や華道のように多くの門下を受け入れるということをせず、成立から600年たった現在、華道や茶道に比べるとなじみが薄い芸道です。
しかし、志野焼の香炉が使用されたり、千利休が志野流で香を学んだりしたほか、茶席では香を焚いて茶室を清め、心を静めるなど茶道とも関わりが深く、日本伝統文化になくてはならない存在といえるでしょう。