どんな版画作品が高く売れる?鉛筆サインやエディション番号など、同じ作家のでも値段の差がつく理由3つ。
版画作品の値段の差がつく理由をご紹介します。
比較的手ごろに買える版画作品
絵画には水彩、油彩、水墨画などさまざまな種類がありますが、エッチングやリトグラフ、シルクスクリーンなどの版画は比較的手ごろな価格で購入可能なことで人気が高いジャンルです。
しかし、持っている版画作品を売却しようとすると、意外と値がつかなかったり、同じ作家の作品同士でも値段に差があったりします。これはなぜなのでしょうか。
今回は、版画作品の値段に差がつく理由をご紹介します。
限定部数の違い
版画は刷りを重ねていくと原版が摩耗し、思うようなクオリティに仕上がらなくなるため、部数を限定して作るのが一般的です。いくつ作るかは作家の意向などによって変わりますが、シルクスクリーンなどは300を上限とすることが多く、500を超えることは稀です。
数を限定して作られた版画作品は、限定部数と部数管理のために割り振られた通し番号が「10/200」のような形で記入されます。これがエディション番号です。
エディション番号の分母は限定部数を表しているため、数字が小さいほど発行部数が少なく希少価値が高いということになります。そのため、同じ作家の作品でもエディション番号によって価格に違いがでます。
なお、シルクスクリーンなどの場合、エディション番号の分子の方は基本的に価格に影響しません。この部分は刷った順を表しているのではなく、単なる通し番号であり、仮に刷った順に割り振られていたとしても、限定部数内であれば刷りによるクオリティの劣化はほとんど見られないからです。
初版と後刷りの違い
近年の作品は限定部数をあらかじめ決めて作り、刷った後は原版を破棄するのが一般的です。
しかし、必ず破棄しなければならないと決まっているわけではないため、原版を破棄せずに残し、人気が出たら追加で刷ることもあります。浮世絵など昔の版画作品ではよくあるケースです。
このような場合、最初に刷られたものを「初版」、追加で刷られたものを「後刷り」と言いますが、後刷りの作品は初版の作品よりもクオリティが低いため、価値も低くなります。
オリジナル版画とエスタンプの違い
版画の工程は「原画を描く」「原版を作る」「刷る」の三つに大きく分けられます。全ての工程に作者が関わって作られた品は「オリジナル版画」、作家が直接関わらずに作られた品は「エスタンプ(復刻版画)」と区別され、オリジナル版画はエスタンプよりも高い価値がつけられます。
オリジナル版画とエスタンプの違いは、余白部分に鉛筆でサインされているかどうかで区別できます。
まとめ
エディション番号やサインは、その作品がどれだけ作られたか、オリジナルかエスタンプかを区別する材料となりますが、1960年以前の版画作品はエディション番号やサインがないこともあります。これは、オリジナル版画の必須条件として版画にサインと限定数を記すことが定められたのは、1960年にウィーンで行われた国際造形美術会議以降だからです。
また、1960年以降の作品でも作家保存用、非売品、試し刷りなどの場合はエディション番号が描かれていないことがありますので、エディション番号やサインがないからといってオリジナル版画ではない、価値が低いとは限りません。
そういう意味では、業者選びも版画作品の値段に差が出る理由の一つといえるでしょう。